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螺鈿迷宮 お気に入りに追加
海堂 尊
出版社・発売元:

角川書店

媒体: Book
ランキング: 6541
発売日: 2006-11-30
カスタマーレビュー

終末期医療(ターミナルケア)を題材とした医療物語  (2008-12-02)
本書の螺鈿迷宮(らでんめいきゅう)は、終末期医療(ターミナルケア)を題材とした医療物語です。主人公である医学生の天馬は、幼なじみの新聞記者である葉子から、黒いうわさが絶えない老人介護センター、ホスピス施設と寺院を一体化させた複合型病院である碧翠院桜宮病院に潜入できないかと依頼を受けて、医療ボランティアとして潜入する。今回は、前2作ではでてこなかった姫宮が看護婦役でてきます。

厳雄院長の強烈なキャラクターがより白鳥や姫宮のキャラクターを圧倒するように思える。父親のような威厳のあるあくの強いキャラクターが医療現場の現状を語るのは妙に説得力がある。

「修羅場で身体を張って覚えた技術だけが、最後の砦だ。」という言葉が心に残った。自分で現場でジタバタして身につけたものだけが、本物の技術として定着するものである。

本書はミステリーというよりは、医療現場のフォーカスさせたテーマ性のある物語である。本書は、終末期医療(ターミナルケア)や死の在り方を題材とした話である。主人公の天馬君のように死の在り方については考えさせられるなと思う。

人が最後にできる教育  (2008-11-30)
とても重苦しい気分になる本だった。
よかれかしという心は、いつから道を過つのだろう。どこから道を外すのだろう。
人の心の中は、光だけでできているわけではない。光の部分と闇の部分を併せ持つことでバランスが作られる。
闇を切り捨てて無垢に光にのみ生きようとすることは、光をあきらめて純粋に闇にのみ生きようとすることと、同じぐらいに愚かなことだ。

これまで読んだ東城大病院シリーズとはまた違った、気骨のある医師が出てくる。
あの白鳥に役者が違うと言わしめる、桜宮巌雄病院長。
死が今よりも身近だった戦中・戦後からの日本の医療が抱えてきた闇の部分が、今回の主題になる。
作者は一作に一つずつ、医学の現状に苦言を呈しているが、今回は死体の上に成り立ってきた出自を捨てようとしている医学への警句が聞こえてくる。

死を看取る。その体験が近すぎて、何度も涙がこみあげてきた。
ことに、三色婆には、それぞれに泣かされた。たまらなかった。
死は、人が最後にできる、他の人への教育だ。
ひとは、いかに老い、いかに病を得て、いかに死ぬのか、身をもって示す。
それを通じて、いかに生きるか、学ばせてくれるのだ。
だから、私は死から目をそらさずにいたい。

『ジーン・ワルツ』の誕生と『螺鈿迷宮』の死  (2008-09-21)
2007年11月30日リリース。海堂氏はいつも小説というメスで日本医療の患部はどこか、を白日の下に曝す。『ジーン・ワルツ』では産婦人科医がなぜ激減したかだけでなく、明治時代のまま変わらない法律の矛盾や、アンケートばかりとっている厚生労働省の逼迫した現実への無反応・無為無策さ、名ばかりの少子化対策といったあらゆるものの問題点を全て提示していた。『ジーン・ワルツ』が人間の『誕生』への問題提起であるとすると、本作は人間の『死』に対する問題提起として書かれている。そしてこの2つの小説は対となって構想されたのでは、と思える。

デビュー作の『チーム・バチスタ・・・』で既に死者へのMRI検査の重要性を説いているが、本作では医者とは切っても切れない『死』の問題と、現代医療にとって『死』とはどのような存在なのか、を読むものに気がつかせる。 そして頭を過ぎるのがマイケル・ムーアの『シッコ』だ。アメリカ医療の酷さはどことなく今の日本の医療の先の姿のように思えてならなかった。

ここに登場する桜宮病院の院長の言葉、『医学とは屍肉を喰らって生き永らえてきた、クソッタレの学問だ。お前にはそこから理解を始めてもらいたい。医学の底の底から、な』が、この作品を象徴している。厚生労働省の考える『死』、病院の受け止める『死』、自殺志願者の『死』、末期癌患者の『死』・・・どれも同じ『死』であるはずなのにこの作品では違って感じられる。それは各々の『生』が螺鈿のように様々に光り輝いているからなのかもしれない。圧倒的な読後感を残す傑作である。

何となく肩透かしな気分  (2008-06-23)
 一応、全部の作品がどこかでつながっていることがわかっているので、出た順にタイムリーに読んでいるが、「ナイチンゲール」で登場した「ハウンドドック」のコンビは、この「でんでんむし」のために来たんじゃないの?と思っていたので、少々肩透かしを食った気分。「ナイチンゲール」ではあまり必要なキャラではなかったし、どこかで活躍させなきゃね。その後も出てこないけど、東京へ帰っちゃったのかな(笑)。
 お話の構成も、いま一つ。姫宮さんを誇張して書きすぎな気がする。一応お医者さんなんだからさ。さっさと「でんでんむし」をなくしてしまったのも、どうかと思う。一読で十分な気もするが、どこに続くかわからないので、一応手元に置いておく。
 それにしても、どなたかも書いておられたが、勤務医って暇なのか?

映画化されるなら次はこれでしょう。  (2008-05-22)
 「ナイチンゲール‥‥」で少々がっかりして、「ジェネラル‥‥」で持ち直して、この「螺鈿‥‥」で「チーム・バチスタ‥‥」に並びました。
 面白かったですよ、海堂先生は現役の医師ですから医療問題も現代の医療矛盾も実感のある内容になって、そこに「AI=死亡時画像診断」の普及の提唱も盛り込まれてエンターテイメントなミステリーに編み上がってました。
 欲を言えば主人公 天馬君 と 氷姫こと姫宮さん の掛け合いでもう少し笑わせて欲しかったですが、映像になるときっと見応えがありそうなストーリーのような気がします。

 

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