インプロヴィゼーション、デジタル、シンプルなメロディ・ライン、絶妙な構成
(2004-09-04)
まず、やはり、濃密なインプロヴィゼーション(即興演奏)やデジタル効果の連続がジャム・バンドの到達点として高く評価されるべきでしょう。音が聴く者にとってときどき重荷になるほどに強靭です。
次に、時には、聴き手とのあいだに一体感を作れず、過剰サーヴィスや自己満足に終わることもある、ジャム/ジャズのインプロヴィゼーション。そのインプロヴィゼーションやデジタル効果が濃密に敷き詰められている割には、メロディ・ラインはシンプルというか素朴というか、どこかで聴いたことのある感じや泥臭ささえ漂うポップ・ミュージックです。それがかえって、ジャム・バンド特有のインプロヴィゼーションが聴き手の鼻につかずにすむことになっているのではないでしょうか。
最後に、トラック11まで飛ばしたあとの、トラック12以降のクール・ダウンが絶妙ですね。ジャム・バンド特有のインプロヴィゼーションが聴き手の胃にもたれずに、お腹いっぱいになれます。
あと、DVDは、レコーディング風景を収めた約26分の作品。英語がわからないと退屈ですが、日本よりもはるかに牧歌的なレコーディング風景、ジャム・バンドの最高峰には似つかわしくないような牧歌的な風景を見ることができます。
ほぼ全曲シングルカットに値する
(2004-06-23)
前作「ラウンドルーム」や前々作「ファームハウス」がラストアルバムだったとしたら、今回ほどの名残惜しさはなかっただろう。前2作の出来が悪かったという意味ではない。それほど本作の完成度が高いということだ。
基本的には「ファームハウス」での平易なスタジオポップ路線を深耕したアルバムといえそうだが、楽曲単位の質はこちらのほうが断然上。間奏曲的に挟み込まれる1~2分の曲を除くと、ほとんどの曲がシングルカットに値する普遍性とポップセンスを備えている。
最近のカウンティング・クロウズを彷彿とさせる軽快な(3)、フィッシュ版の「ロング・ワインディング・ロード」とでも呼びたくなるような(13)、意外なソフトロック趣味を露呈した(14)などを聞くと、まだこんなに持ち札が残されていたのかと、途方に暮れてしまう。
プロデューサー兼エンジニアのチャド・ブレイクは、90年代にロス・ロボスやスザンヌ・ヴェガのサイバーロック化を促した人物。生ドラムやギターにデジタルな音像を与えた(2)(4)などは、いかにも彼らしい。ただ、バンド自体のめくるめく新展開が強烈すぎるためか、今回ばかりはこの鬼才プロデューサーも影が薄い。
曲はいずれも3~4分の短いものばかり。しかし、どの曲にも長いインプロヴィゼーションが沸点に達したときの“濃密な瞬間”が無理なく収められている。
聞き始めて7年になるが、スタジオ盤で1曲残らず納得できたのは今回が初めてだ。個人的には大推薦。私も老若男女・ジャンル志向を問わず、すべての音楽好きに推薦します。
進化形
(2004-06-17)
解散ということに感傷的になる必要はなく、
純粋にこの作品を捉えて、最高傑作だと感じてます。
1998年のThe story of the ghostでJAM的なアプローチでの
アルバムは既に完成形に至っていたわけで。
その後の、Farmhouse・Round roomへとの流れをみれば、
この作品で見せるPhishの進化は、もし解散がなければ、
ずっと進化していったんだろうなって感じてます。
4人の言う、
「いくところまでいってしまったんだ」という言葉は、
決して音楽の進化がとまってしまったってことや、
これ以上、新しいことはできないということではなく、
4人の関係性・信頼感・敬意が、最高の頂点に達したということだと
個人的には感じてます。
それを裏付けるのが、
4人それぞれの曲、
Barnでのレコーディング風景を収録したDVD、
The connectionという楽曲。
進化を見せてくれた この作品が、
最後の作品で本当によかったと思えます。
最後ということに感傷的になることなく。
旅の終わりに
(2004-06-16)
このアルバムが発売される3週間前、突然PHISHは解散を表明。その日からこの新作「Undermind」が手元に届くまでの間、僕はひたすら彼らの過去の作品を聴き続けた。2000年から2002年にかけての活動休止とは全く異なる本当の解散らしい。2000年、活動休止の時「バンドにとって次の17年のため」、ヴォーカル&ギターのトレイ・アナスタシオがそう言ったにもかかわらず。
聴いてみればわかる。このアルバムには優しさが満ちている。1曲目“Intro”からPHISH最後の物語は幕を開け、2・3曲目のいかにも彼ららしい愉快な楽曲へと続く。9曲目の“Two versions of me”では「No more fish in the sea」というフレーズが歌われている。14曲目“Grind”、メンバー4人によるアカペラ。最後のアルバムの最後の曲、思わず涙が出そうになった。
DVDには4人が本当に楽しそうにレコーディングを行う姿が収録されている。彼らほど“音を楽しむ”事ができるミュージシャンはいないのかもしれない。解散する理由が何処にあるのだろうか。
男女、年齢問わず全ての人にお薦めします。
”本物”のバンド、Phishに最大級の感謝の意を込めて。
(2004-06-16)
Phishのフロントマン、トレイ・アナスタシオがオフィシャル・ウェブサイト上で、”Phish解散”を表明しました。ということは、事実上今作がラスト・スタジオ録音盤となります。
ラスト・アルバムとうことで、寂しさと期待の入り混じった複雑な心境で聴きました。結論から言えば、悲しいですがPhishの”ピーク”はもう過ぎてしまっていたんだな、と。今作では、往年の軽快なグルーヴや、狂ったようにジャムしまくる”イキのよさ”や”勢い”が希薄です。どちらかといえばへヴィなタッチの楽曲が多く、そして、どこかもの悲しさを感じる曲が並んでいる印象を受けます。これがラスト・アルバムということを改めて思い直すと、ただただ「せつない・・・」という言葉しか出てきません。辛辣な言い方かもしれませんが、きっとPhishというバンドは全てのエネルギーを使い果たし、枯れてしまいつつあったのでしょう。そして彼ら自身、それを自覚していた。解散の理由はきっとそこにあるのではないか、と思っています。
今はただ「せつない」気持ちでいっぱいですが、今まで”本物”の音楽を届け続けてくれたPhishに、心から「ありがとう」と言いたいです。
本来ならば(今作がラスト・アルバムでなければ)もっと辛辣な感想を持ったかもしれません。本当ならば(今作の出来映えからすれば)★3つ程度のところですが、彼らへの感謝の意を込めて、★をもう1つ付け加え、彼らに捧げたいと思います。
ありがとう、Phish!
メンバー個々の今後の活動にも期待しています。