火の玉のような渾沌
(2004-11-27)
1967年7月17日、コレクティブ・インプロビゼーションというベクトルを指し示していたジョン・コルトレーンが死んだ。多くのジャズ・ミュージシャンの精神的支柱であった彼の死後、もう一人の精神的支柱であるマイルスがどう動くか、ジャズ全体が彼の動向に注目していた。それが60年代の終わりのジャズの渾沌とした状況だった。そしてマイルスはジャズ・ファンクに突っ走る。
なぜ、ジャズ・ファンクか?その答えは同じ1967年にデビュー作『アー・ユー・エクスペリエンスト?』を発表したジミ・ヘンドリックスの音楽である。彼の音楽がいかにマイルスのジャズ・ファンク傾倒に火をつけたかをロックを聴き続けてこの時期のマイルスの音を聴いたものは誰しも感じずにはいられないだろう。一言で言ってマイルスはジミ・ヘンドリックスの音を自分のものにしたかったのだ。
よってこの時期のライブはロックを聴き続けてきてこの作品を聴く者と、ジャズをピュアに追いかけてきてこの作品を聴く者とではまったく違って聴こえてしまう。特にギターがだ。
マイルスはジミ・ヘンとファンクしたくてたまらなったに違いない。故にロックとして聴けばここでのギターは単なるジミ・ヘンの偽物である。このパラドックスと渾沌が火の玉のように燃える。
そう、1969年8月の3日間CBSスタジオで録音された『ビッチズ・ブリュー』から、マイルスが一時沈黙するまでの間に演奏された作品群は、ジャズ・ファンクという強烈なベクトルに、才能あるミュージシャンを次々と放り込み、その渾沌から何が見えてくるかをマイルス自身も若手も同時体験した時期だったと僕には思える。
こういうことはマイルス以外誰もしなかったし成しえなかった。年齢がいったミュージシャンのほとんどは自らの年齢を鑑み、冒険を忘れ、スタイルを固定し、ひたすら枯れて行くような静的方向へと固まるばかりだ。しかしマイルスにとって年齢とは単なる数字であって、今日は昨日に1を足した前進の加算でしかなかった。真の天才は年齢がない。
このパラドックスと渾沌が火の玉の経験が後に自らの音楽とは何かを参加したミュージシャンに問うこととなる。それが、チック・コリアのスパニッシュ回帰であり、キース・ジャレットの静寂である。そしてそれらの開花がジャズを一段上の次元の音楽に押し上げたことはまちがいところだ。
本作はそういうジャズやロックの様々な変容を頭に入れた上で聴くべきギグなのだと僕には思える。
理屈ぬきに素晴らしい
(2004-10-30)
LPで発売された当時、シュトックハウゼンのようだという評言もあった。
全くその通りで、もはやジャズとかフリーとかいったジャンルの枠を超えて、前衛音楽や集団即興演奏に近い世界に突入している。
理屈ぬきに凄い。何度聴いても興奮する。
70年代の「最前衛」の音楽が記録された名盤。
後半にビックリ
(2004-09-04)
ギターのウジャウジャッ!という音に、ワウワウ・トランペットが唸る怪しさ全開の前半ですが、途中でピタッと演奏が止まったり、奇妙な「間」をマイルスは作り出していますね。それが後半になると、ゆったりした流れになり、4ビートになり始めた時には驚き、また妙に嬉しくなりました。大河の如き音を司るマイルス、やっぱりクールです。
アガパンの中でアルフォスターはほんとに良いですか?
(2004-01-17)
ワタクシはエレマイルス好きだが、その中でアガパンのプライオリティは低い。やはり無編集ということでダークメイガスのような一貫した迫力には達しがたいし、どうしてもかったるいな、と思うところがあるのである。一つには長すぎるピートコージー、うるさいぞ、いい加減にしろと言いたいのもあるが、アルフォスターのドラムがもたりまくってずっこける、というのも大きい。レジールーカスやマイケルヘンダーソンがビシビシ刻んでる中でアルフォスターのタイミングがあらよっと的にずっこけている瞬間が多々みられる。そんなのどうだっていいじゃんか、といわれるひとも多かろうけど、どうしても好きになれないポイントの一つである。あるといえばこのアルフォスター、マイルス復帰後のバンド、すなわちマーカスミラーとのコンビネーションではこういう感じがしないのだが....。やはりマイルスにはトニーやジャックデジョネットのような先乗り型のドラマーのがふさわしいと思うのだがどうだろう。
マイルスミュージックの頂点その2
(2003-12-29)
昼の公演を収録したアガルタと共に、アガ・パンとして、マイルスミュージックの頂点をなすアルバムです。マイルスと共に、ライブを重ねつつ、マイルスミュージックの熟成を重ねてきたメンバーによる演奏だけに、音の塊が一体となって押し寄せるグルーブ感は、鳥肌が立つような感動があります。
一方、熟成という言葉の意味には、アガ・パンによくいわれる熱狂・狂乱とは反対にクールという意味もあり、熱狂・狂乱といった先入観を持って聴かれるとがっかりされると思います。
何にせよ、マイルスバンドが長い旅路の末に、たどりついたサウンドだけに
聴くたびに新しい発見のできる 深いアルバムです。