マイルスは自らの創造性を受け止めてくれたことに安堵したんとちゃうやろか
(2008-09-12)
ライブ「アガルタ」を、スタジオ録音にして整然と、密度が高くしたようなアルバム。マイルスは、棺桶に片足突っ込んでも黒い鬼神と化して、メンバーたちをオルガンとトランペットでしばいていくような感じさえ受けますがな。
1枚めの1曲めはエリントンに捧げはっとるので、マイルス自身も喪に服すかのような深い哀しみに満ちたトランペットで中盤、終盤に入ってくる。慟哭のフレーズが繰り返される曲なんですけども、マイルスが吹いている箇所はとりわけ、哀しみの深さがちゃう。凡人のわてが聴いとっても痛々しく感じるほど。
4曲めのRated Xはニューヨークライブでも演っとりますけども、鬼神的集中度がちゃう。さしずめ毒蛇マイルスがどくろを巻いて、哀れな楽隊たちを指令し、戦慄のリズムを繰り返す。20世紀の年寄のわての脳を活性化してくれる不思議な曲。
2枚めでは1曲めカリプソ・・・が面白い。マイルスのトランペットが曲を率い、継続するリズムに全楽器の全ての音が溶解してゆくかのよう。ライブ演奏のような曲ながら、ダルなところがない。畳み掛けるようなリズムの燃焼度が凄まじく、聴いとるこっちまでトリップしそうになる。硬質な曲調ではあるが、速 -> 遅 -> 速、というテンションの高い曲調の変化に合わせて、クールな女を突き上げ、緩やかに揉みしだき、次第に加速して注ぎいれたい、ような錯覚に借られる麻薬のような曲である。
ケイ赤城さんが、マイルスは指示に従うことを求めながらも、必ず各人に独自のオリジナリティを要求した、とインタビューで答えて居った。本作で自発的にオリジナリティを発揮して居るものは1枚め3曲め冒頭左からのキース・ジャレットとその他パーカッション(Mtume、シタール奏者、タブラ奏者)やろうか。何度もセッションをやって、本作となったらしいが、すでに肉体的にはボロボロになっていたマイルスは各セッションの後、内心、キースやMtumeらが自らの創造性を受け止めてくれたことに安堵したんとちゃうやろか
買いです。
(2007-11-11)
デューク・エリントンの死に手向けたと言われる「 ヒー・ラヴド・ヒム・マッドリー 」から始まる本作は、いわゆる「ジャズ」をイメージして接すると、一瞬面食らうかもしれませんが、そこに横たわる静謐な世界に恐れを抱かず踏み込んで行けば、必ずやそこから豊饒な何かを汲み上げられるに違いありません。それは「ジャズ」の何たるかを教えてはくれないかもしれませんが、これ以前これ以後の境界線にも似たなにかを聞く者にもたらしてくれるはずです。
マイルスという名の金太郎飴
(2007-05-21)
●初めてこのアルバムを聴いた時、正直言って理解できなかったですね。今思えば、まだその当時は、純粋にジャズばかり聴いていた時期なので、そう簡単には理解できない状況だったのだと思います。
ただし、CD1枚目の4曲目「Rated-X」だけは何故か心惹かれるものがありました。あの「暴力的な美しさ」を漂わせたマイルスのオルガンが何故かたまらない。
●結局、このアルバムを理解するのに数年かかりましたが、私の結論として、このアルバムはマイルスという名の“金太郎飴”だと思います。どこを切ってもマイルスの音! この飴を堪能するのは至福のひとときですね。マイルスの長い音楽人生の中で、このアルバムほどマイルスの味を堪能できる作品はないでしょう。
また、この“金太郎飴”を見事にデコレーションしたテオ・マセロはやはり凄いと思う。
●現在、私にとってこのアルバムは『無人島に持っていく1枚』的な存在です。前述「Rated-X」をはじめ、どの曲も「素晴らしい」「凄い」「衝撃」の“3S”が備わっています。
現在ではCD2枚目の3曲目「Mtume」をよく聴きますね。この曲の12分28秒目こそ“This is the Miles!!”
ストレート・マイルス!!
(2007-05-04)
サイドマンを迎えずにストレートにマイルス・ミュージックを表現したスタジオアルバムとして、実際これはかなり久しぶりの作品だったのではと思う。ジャケットからして強烈な主張、アナログ盤では自己紹介は無しです。
一聴すると全体的に激しいアルバムと思いきや意外に聴きやすく展開していきます。1曲目がオルガンをフューチャーしたエリントンへのレクイエムから始まるせいもあるのかも。他の曲ではファンクな「Honky Tonk」、EL&Pを進化させたような元祖ドラムンベースといえる「Rated X」、黒々ブルース「Red China Blues」等とあらゆるジャンルの格好良いところだけを抽出したような曲が聴けます。
しかし余りにも素晴らしいのが「Mtume」。そのエムトゥーメのコンガに斬新なベースライン、巧みなワウワウ・トランペットが絡みトランス状態に、そこに突然オルガンの総攻撃!?これは30年以上たった今でも全く色褪せない所か先を行った凄さです!
ちなみに2枚組の頭を飾る「He Loved Him Madly」と「Calypso Frelimo」はともに30分を超える長ーい曲、やはり2曲ともこの分数ではアルバムとして長すぎる気もする。発売当時このアルバムは売れなかったそうだが、そういうところも影響しているのでは?
もちろんジャケのマイルスからは“それがどうした!”という声が聞こえる。
まさにマイルス
(2007-04-02)
すべてがマイルスの顔をして立ちはだかる。
エリントンレクイエムからラテン音楽(なのか?)。ドラムンベースにしか聞こえない楽曲。
訳わからないままに30分が一気に過ぎ去る楽曲。ブルース以上にブルースな楽曲。
トランペットを吹かなくてもオルガンを適当(?)に叩いていてもすべては「マイルスデイヴィスプロデュースによる音楽」になってしまう説得力。
Calypso Frelimoにおける序盤のマイルスのソロと中盤のギターのインタープレイ、終盤のパーカッションソロは圧巻の一言。
これだけの完璧の編集を全編に渡り行ったテオマセロのお仕事に心から拍手