冒険の始まり。ただ水平線には蜃気楼が・・・
(2008-08-01)
Herbie Hancock(piano), Freddie Hubbard(trumpet), George Coleman(tenor sax),
Ron Carter(bass), Tony Williams(drums) 1965年3月17日録音
これほど言葉で表現するのが難しいアルバムはないだろう。サウンド云々を抜けばイメージと
してはマイルス・デイヴィスのカインド・オブ・ブルーを聞いたときのような印象を受ける。
それは初めて聞いて、ああ綺麗だな、美しいなと思う。そしてよくわからないのでまた聞く。
ああ綺麗だな、美しいなと感じる。この一枚もそれと似ていて、本当に何回聞いても綺麗で
美しいとゆう感情が湧いてきて、いつまでたっても、つかみどころがないような気がする。
モダン・ジャズ期、特に新主流派などと呼ばれる作品群の中には、こうゆう不思議な魅力を
もった作品がチラホラと出てくる。この一枚もそんなジャズらしさを凌駕してしまうほどの
世界が繰り広げられる。
1曲目「Maiden Voyage」から壮大でドラマチックな世界に惹きこまれます。ハンコックの
紡ぎだす魅惑的な音色がたまらなく美しいね。
そして[2],[3],[4],[5]と、それぞれにそれぞれのドラマがあって、すべてを聞いたとき
そこに夢想的な世界が構築される感じだ。
休日なんかに朝から晩までかけて、じっくり、ゆっくりと聞き込みたい作品だ。
メンバーはお馴染みのメンツだが、ここでの頑張りはジョージ・コールマンとロン・カーター
かなぁ。包み込むように優しく大きいテナーの音色がピッタリと嵌るし、ベースもカーター
じゃなきゃ、ここまで心地よい空間はできなかっただろう。
何々ジャズ云々とか、ここのソロがあーだ、こーだとかじゃなく、もっとスケールの大きい
一つの芸術作品として薦めたい一枚。
壮大なる海のジャズ絵巻
(2007-12-12)
完璧だ。
抒情に富んだわびさびの利いたテナー。喜怒哀楽のある力強いトランペット。George Coleman(ts)とFreddie Hubbard(tp)の表現力豊かなプレイが素晴らしい。リーダーハンコックの作り出すビートのキャンバスの上に壮大なる海の絵巻を書き上げていく。ホリゾンタルなコールマンとヴァーティカルなハバートが良いコントラストを成す。その色彩感覚は限りなく繊細で豊かだ。リズミックなタッチで、「波」を表現するかのようなリズムセクションの波動も見事。的確なリーダーシップで航海図を描いて行くハンコックのピアノ。臨機応変なトニーのドラムス。やはり彼は柔らかなものをやらせても上手い。しっかりボトムをキープするカーターのベース。文句なしだ。
海をテーマにしたコンセプトアルバム。「初めて航海」に出た船が、「ハリケーン」に遭遇し、「小さな生き物」を発見し、「適者生存のルール」を体験し、悠然と泳ぐ「イルカの群れ」に出会う。目を閉じ耳を済ませて聞けば、収録された曲のタイトルの情景が浮かんでくるような壮大で美しいジャズ物語である。
"Empyrean Isles"と"Speak Like A Child"の間にリリースされた、ハービー・ハンコックのブルーノート第5作。1965年5月の録音で、Tony Williams(ds), Ron Carter(b)(二人は当時のマイルス・デイビス・クインテットでハービーとリズムセクションを組んでいた)とFreddie Hubbard(tp)が前作から続いて、元メンバーのGeorge Coleman(ts)がトラで参加している。ショーターでなく彼を呼んだことが、成功要因の一つに上げられるだろう。前述の2作と合わせて、ブルーノートのハンコック3部作と言えよう。
実はコマーシャル・ジングルだった!
(2006-12-27)
新主流派またはハンコックの代表作として有名なアルバムです。このアルバムにケチをつける人はいないでしょう。初心者にも安心して薦められるアルバムです。
特に1曲目のタイトル曲'Maiden Voyage'は名曲としても有名です。この曲が嫌いな人はいないでしょう。これについては、いろいろな角度からほとんど語りつくされた観がありますが、あまり知られていない逸話があります。実はこの曲はもともと髭剃りのコマーシャルのために作られたものです。それを元にアルバム用に書き下ろしたのが、かの有名な'Maiden Voyage'なのです。ハンコックってこの頃から何気にコマーシャルだったんですね。
「海」を見事に表現したジャズアルバム
(2006-03-06)
ビル・エヴァンスの後にマイルスバンドにやって来たピアニスト、ハービー・ハンコック。
彼はビル・エヴァンスが切り拓いた叙情的な表現やモードの手法を既に完璧にマスターしていた。
また、そしてマイルスがそうであったように、70年代にはファンク、そして最近では
ヒップ・ホップやドラムン・ベースに至るまで貪欲にジャンルを吸収し、完全に自分の中に取り込み、
常に時代の先を見据て行動できる優れた音楽家である。
このアルバム製作時、ハービーはマイルスバンドに在籍中であったが
マイルスが療養中であったため各メンバーはそれぞれソロ活動中であった。
そのメンバー「+α」でハービーがリーダーを執ったのがこのアルバム。
にもかかわらず、マイルスバンドとは異なる感触を持った作品を生み出した。
タイトルが示すとおり、壮大な海をアルバム全体のモチーフとして扱っていて緩やかなトーンに統一されている。
いつもは高等数学的で奔放なドラミングのトニー・ウィリアムスのスネアも抑制されていて無数の小波のように散りばめられている。
ハービーのピアノも広大な海の息遣い表現すべく繊細なタッチで、
ロン・カーターのベースはぴったりそれらにくっついてうねりを生み出す。
管楽器陣の紡ぐ音は大海原に反射する太陽光であり、あたかもその上に存在する空間そのものを照らし出してるようだ。
海がテーマとして扱われて、しかもそれが似合うジャズというのは本当に数少ないわけだが、
ここではハービーの目論見通り海の雄大さ、そしてそこで育まれる神秘的な生命の流麗ないとなみまでどこまでも美しく描かれている。
新しい論理で捉えようとする自然
(2005-10-25)
ハービー・ハンコック、1965年の録音。
1963年から1968年に至るマイルス・デイビスバンドでの活動
において、「ウォーターメロンマン」に代表されるジャズ・ロックの
流れから、モード・ジャズへと傾倒していったハービー・ハンコック。
そのマイルス・デイビスバンド加入2年目に録音された本作は、正に
1960年代、ジャズの主流となっていったモード・ジャズを代表
する作品といえるだろう。
「コード進行からの開放」をテーマにしたモード・ジャズは、奏者の
技量を最大限に生かすことが出来る場である。だが、逆に言うと
その演奏にはそれなりの力量が要求されるわけで、当時の主流の音
といえども、それに携わることの出来る人材はそう多くいなかった。
その事は本作の共演者を見てもらえば、分かっていただけると思う。
共演者はフレディー・ハバード(tp)、ジョージ・コールマン(sax)、
ロン・カーター(b)、アンソニー・ウィリアムス(ds)の4人。
ウェイン・ショーターがマイルスバンドOBのジョージ・コールマン
になった以外は、正に当時のマイルス・デイビスバンドといった面々。
メインバンドとほぼ同じメンバー、クインテットという同じ形態で
モード・ジャズが録音されているのである。そういう意味でソロ作品
というより、本業を更におしすすめるためのサイドプロジェクトと
捉えた方が本作の正しい理解といえるのかも知らない。
そのモード手法のテーマに挙げられたのが、「処女航海」。
動と静。様々な表情を表す母なる海と、それに向かう真新しい船。
自然の中に人間の作った真新しい船が浮かび、美しい風景を構築する。
この事は、自然の表す「現象」と人間の理性からくる「論理」の共演
を意味するのではないだろうか。新しい技法であるモード手法を音楽
にもたらした1960年代の新鮮な空気が伝わってくるようである。