ミンガスの基盤としての、人類への哀悼
(2007-09-24)
1956年スタジオ録音。1曲目が『直立猿人』で、「進化」「優越感」「衰退」「滅亡」の4楽章構成になっており、動物を出発点として雄々しく、期待に満ち、ワクワクして誕生した人類が、たちまち降って湧いた苦難に遭遇し、それと戦いながらも衰退してゆく宿命を描くことで現代文明の本質を捉えた詩人ミンガスは、1現代人として涙し続ける。ここがミンガスの基盤だ。ここから、怒り、自嘲が生まれ、ユーモアも笑いも生まれ、彼のその後の作品の底流をなして行く。彼はこうした屈折した深い感情を隠さないが、それに飲まれてしまうことはない。ミンガスが現代人に広く受け入れられるのは、我々現代人の感性の根底にある部分がそのまま共振するからだろう。本作は、そうしたミンガスの基盤部分を大河小説のごとくに表現した名作だ。
コンセプトアルバム!
(2007-02-26)
とかく難解(本人が相当気難しかっただけのような気がしますが)と言われるミンガスですが、イメージは猿から二足歩行になり、人間となった生き物がとんでもないことをしでかしている、といわんばかりのメッセージが感じられる一枚。そういう意味でのコンセプトが強く感じられるし、たまたまジャズという方法で表現しただけ、そんな気にさせる一枚です。彼の作品ではかなりのヘヴィローテで聴きまくった時期がありました。
黒人であることの鬱屈、コンプレックスの塊のような頑固者だったそうですが、かのカーター大統領から文化功労かなにかでミンガスがなくなる少し前に勲章(表彰?)を受けたときに男泣きしたのは有名な話。やっと認められた、という実感がそうさせたのでしょうか…。
ベーシストとしてベースのみに徹しない、音楽をかなり鳥瞰的にとらえたミュージシャン、後世に与えた影響も大きく、これは代表作のひとつといっても良いぐらい聴きやすいと思います。
究極のブルース
(2005-07-06)
エリントンを通過したジャズがブルースに回帰する。モダニズムを通過したカフカが神話に回帰するように。その種の典型はその種を超える。激しく重いのに、天上的な軽さがある。ジャズコーナーにだけ置いてあるのがもったいない、ブルースファン、ロックファンも必聴の、真の傑作。ハードバップよりレディオヘッドに近いのである。
この後、ロックンロール出身のダニー・リッチモンド(ds)が加入すると、本盤で成功した粘っこさはミンガス盤から減少してしまう。良し悪しではなく、本盤の世界はこれ以上の展開などあり得ないということなのだろう。
直前のライブ『アット・ザ・ボヘミア』も是非併せて聴かれたい。ライブで試みられた方法論を吟味して、この『直立猿人』に至った過程が見えてくる。