余計なものはいらない。これぞテナーサックスの醍醐味。
(2008-07-06)
1962年録音のデクスター・ゴードンの最高傑作。ゴードンのテナーの魅力を味わうのに
最も適したアルバムでしょう。その優しさ、大きさ、太さ、三拍子そろったテナーの音色
が存分に味わえます。リズム陣も、ソニー・クラーク、ブッチ・ウォーレン、ビリー・ヒギ
ンズと充実していて、中でもやはりクラークはゴードンにとって、まるで空気みたいな存在
で、優しく寄り添う様にしながらも、ブリリアントに響く、力強いプレイを聞かせてくれま
す。
1曲目「Cheese Cake」では甘いテナーのメロディに、酸味がかったクラークのプレイが
絡まって、甘酸っぱい癖のある出来栄えで何度聞いても飽きないなぁ。
2曲目「I Guess I'll Hang My Tears Out To Dry」は、まさに真骨頂ともいうべきテナー
の優しい音色が、胸をポカポカ暖かくしてくれます。
そして何といっても6の「Three O'Clock In The Morning」はイントロをはじめ、楽しくて
心地よくて、しょうがない1曲。ずーっと聴きたいぐらいで、終わりのチャイムが鳴るのが
残念なぐらい。
その他にも、ユニークなリズム解釈が面白い3や、おなじみ「Love For Sale」も、ゴードン
の伸び伸びしたプレイに、ビリー・ヒギンズの華麗なスティック捌きに唸らされます。
改めて思うと、デクスター・ゴードンほどワンホーンが似合う男はいなかったんじゃないで
しょうか?それは決してロリンズみたいに豪快に吹き回せるという意味じゃなく、ゴードン
の場合、本当に余計なものはいらないというか、彼の音色だけで満足できる、むしろテナー
一本だからこそ感嘆に浸れる気がするんだよな。ここに本当にテナーサックスの醍醐味が
ある。ずーっと、ずっと聴き続けたい一枚。是非おすすめ。
キング・オブ・テナーのグレイテスト・アルバム
(2005-06-11)
デクスター・ゴードンは実に息の長いプレイヤーだ。肺活量ももちろんだが、そのキャリアにおいての充実したプレイヤー人生のことを指しての表現である。これほどまでに骨太で音がでかく、それでいて繊細にスタイルを進化させ続けたプレイヤーは稀である。コルトレーンほど性急な求道者でなく、ロリンズの本能的ともいえる天性の才能への依存とも違う。そんな長いキャリアのゴードンゆえさまざまな名盤を生み出してきたが、本アルバムは彼の数ある傑作の中でも最高の出来であり、畢生の名作といえる。ゴードンのソロは歌心にあふれ、曲のテンポに惑わされることなく、音の一つ一つが粒ぞろいで立っている。70年代後半にデンマーク(コペンハーゲン)のカフェ・モンマルトルとノルウェー(オスロ)のクラブ・セブンで聴いたライブでも、彼のゆったりとした風格あるソロは、テナー・サックスのサウンドの粋とは何かを知らしめるものであった。そのときのピアノはケニー・ドリューだったが、ここではソニー・クラーク。どちらも名手だが、クラークの哀愁を帯びたバッキングに支えられ、力強く逞しくやさしく、そして奔放に吹きまくるゴードンが圧倒的だ。まさにキング・オブ・テナーのグレイテスト・アルバムだといえよう。今聴いても、まったく古さを感じない新鮮なサウンドだ。
そのゴードンも共演のソニー・クラーク、そしてビリー・ヒギンズまでもがもうこの世にいない。
MAIN STREAM JAZZ
(2003-10-08)
映画ラウンドミッドナイトで俳優もしていたナイスなデクスターゴードン。このアルバムは今から40年前のもの、そして彼の音楽的なキャリアでのピークであると思われる。レイドバックしたサックスソロについつい聞き惚れてしまう。バンド全体が見事にひとつに溶け合った瞬間がここにある。こういうことは非常にまれだと思われる。アメリカのジャズメンは多くがヨーロッパに逃げ出す、この人も例外ではない。そんな波瀾に富んだ人生のデクスター。バラードの美しさ、リズムセクションの充実感、ソニークラークのセンスのよいバッキングなどすべてが融合してこのアルバムを奇跡的に傑作にした。10点中10点