忘れ得ぬ歌手
(2003-08-14)
1977年の晩秋「歌手ジャック・ブレルの復活作が、フランスで一大センセーションを引き起こしている」こんな内容の一報が一般紙の社会面に掲載され、それは音楽誌の記事よりも早かったことを覚えている。もっとも当時の日本では、ブレルの作品といえばヒット曲「行かないで」を中心としたベスト盤が1~2枚出ていた位で、一部の熱心なシャンソンファン以外には、当初さして注目を集めることは無かったように思う。
ジャック・ブレルーベルギーに妻子と経営する工場を残し、歌手をめざしてパリに上京する。大きな成功を収めるもその人気の頂点で引退、南太平洋のマルケサス諸島で隠遁生活を送るが、不治の病を得たことを知り、最後のレコーディングの為にパリへ戻る。
ゴーギャンを想起させる!ドラマチックな人生と共に、本作の内容の素晴らしさが人々に広く知られるにつれ、日本でもこの年の大きな話題作となった一枚だ。
本作の素晴らしさを一言で要約すれば、「ピュア」ということになるのかも知れない。それもどこか強靱さを感じさせる純粋性である。さらに大風呂敷を広げた言い方をすると、ここでブレルが作り上げた音楽は戦後の大衆音楽には珍しく、アフロ・アメリカン音楽(ジャズ、R&Rなど)の影響をほとんど感じさせない希有な傑作である。
リマスタリングされた本CDは、アナログ盤以上にブレルの艶やかな咆吼、ヴォーカルが楽しめる。なおジャケット写真の青空は、マルケサス諸島の青空が使われている。