思わずどよめく
(2006-06-05)
20年くらい前にサン・ハウスの演奏風景をフィルムで見たことがあるが、右ヒジの付け根から手をブン回すように弾く、とんでもないハード・ピッキングに驚愕した。思わず会場のあちこちから「うわ!」「おおっ!」というどよめきが起こったのを覚えている。同じデルタ・ブルースでも、弟子筋のロバート・ジョンソンは三連符を多用するなどずいぶんとモダンだが、サン・ハウスはよりプリミティブなビート感覚だ。華麗なロバジョンにはない、凄みが聞き所。この65年のセッションは再発見ブルースマンの録音としては極上の部類で、人によっては伝説のパラマウントセッションより気に入るかも。
「死の手紙」に引きずり込まれて
(2006-05-26)
何しろ曲名が「デス・レター」(死の手紙!)である。衝撃を受けない方がおかしい。アルバム冒頭、不意に突っ掛かるようなスティール・ボディーのギターの音がギクシャクと、またぶっきらぼうに鳴り出す。そして引っぱたくような低音と気ぜわしくケイレンする高音に急き立てられるように、よわい65になろうかという渋い声が「惚れてた女が死んだ」と歌うのである。「さよなら。最後の審判の日にまた会おう」と歌うのである。その迫力たるや、下手なロックよりはるかに激しく、強烈で、否が応でも聴く者を引きずり込まずにはおかない。
「デス・レター」にはニューポート等のライブも含めて幾つかテイクがあるけれども、ブルースにはよくありがちなように、大抵歌詞が違う。特に後半部が著しく、行き当たりばったり、出たとこ勝負的にまちまちで、しかしそんな中でもこのDISC1の歌詞は絶品の部類だろうと思う。かつて女の寝ていた枕を抱きしめ、すると微かに自分を呼ぶ何とも澄んだ女の声。サンは呻きにも似た物悲しい声を上げる。
かつて「FATHER OF FOLK BLUES」というタイトルで1枚のLPレコードが出ていた。それがこのアルバムのDISC1にあたる。流石にいつ聴いても迫力があり、圧倒的である。「デス・レター(死亡通知)」を始め、「ルイーズ・マギー」、「サンダウン」、「レヴィー・キャンプ・モーン」など、いずれもミシシッピー・デルタ・ブルースの巨人の貫禄がずっしりと伝わってくる。
一方のDISC2には、DISC1録音時のオルタネイトや未発表に終わった曲が、レコーディング・エンジニアとのやり取りと共に収められている。
このアルバムはサンの死後4年ほどして発表された。かつての「FOLK BLUES」は「THE DELTA BLUES」へと変えられて。
生きたデルタ
(2002-03-01)
僕はこれを聴いてデルタブルースにはまりました。まずシンプルなスライドギターが熱いビートを刻み、伝道師的なパワフルなボーカルが響き渡ります。なんとストレートでなんと言う説得力でしょう。戦後に再発見されたブルースマンでは文句なしのナンバー1でしょう。サンハウスと言えば、あのロバートジョンソンにギターを教えた人物として有名ですが、この時期の円熟したスタイルは全く別ものです。彼のレコーディングデータと言うと1930年にチャーリーパットンとセッションした初録音と1941年と1942年に議会図書館用に録音したもの、そしてこの1965年の再発見後のセッションくらいなもの。その他再発見後のライブ版は幾つかあるものの、なんと少ないことでしょう。その少ない中でやはり一番パワフルで、サンハウスの魅力が凝縮されているのが本作ではないかと思うのです。ブルースファンだけでなく、ロックファンにも多く聴いてもらいたい作品です。