イスラームって、過激派ばっかりじゃない
(2008-08-27)
著者の師岡さんは、エジプト人の父と日本人の間に生まれ、日本語もアラビア語もネイティブ・スピーカーとして会話できるバイリンガルとして育ちました。
現在、NHKラジオ日本でアラビア語アナウンサーを務めるながら、慶應義塾大学講師、獨協大学講師をつとめ、アラブの文学や歴史に関する執筆活動も行なっておられます。
9・11のおかげで、平気で自爆テロするイスラム教は怖い、というイメージが世界中に蔓延し、日本にも「なんとなく怖い、キライ」という人が多いように感じます。
そんなことはない、と師岡さんが最初に挙げたのは、「悪の枢軸」という2人組のコメディグループでした。
アラブ系アメリカ人の2人は、アラブ人への偏見をさかてに取って、ネタとして笑い飛ばしています。
たとえば、FBIから指名手配されているテロ容疑者と同姓同名というアハマド・アハマドのジョーク。
「白人はいいよな。空港に行くときは、どうだい、出発の1時間半
とか2時間前に行けばいいんだろ? 僕は1ヶ月半前から行くぜ」
搭乗してシートベルトも締めたところで、「アハマド・アハマドさんですか? ちょっと同行願います」と機外に連れ出される場面は爆笑ものだそうです。
偏見を笑いに変えるなんて、カッコいいじゃありませんか。
「イスラーム原理主義」というと、極端な制約と禁止の教えというイメージがあります。
しかし、師岡さんが指摘するところによると、ムハンマドは、
「過剰は身を滅ぼす」
と教えたり、
「女は男と対等であり、義務と同じだけの権利を持つ」
と宣言するなど、当時としては進歩的・急進的な内容でした。
むしろ、極端な制約と禁止の教えにしてしまったのは、ムハンマドの教えを正しく消化できなかった男たちの責任なのです。
ステレオタイプに陥らないよう、知見を広めてくれる一書でした。
鋭い分析とユニークな視点がためになる。
(2008-07-13)
この本を読む意義は、世間に広まる間違った常識を見抜き、多くの日本人が知らないイスラームの知識を得ることにあると思う。例えばイスラーム原理主義という言葉のおかしさ。ヒジャーブ(ベールと長袖、丈の長いスカートという服装)は女性が社会で男性と対等に戦うための戦闘服であるとか、「1日に5回お祈りするのですか?」というのは初対面の既婚男性に「奥さんをどのくらい愛していますか?」というのと同じくらいプライベートな質問であるなど。イスラム世界にかかっているモヤを取り払ってくれるような情報がふんだんに詰め込まれている。
また、宿屋の女主人との言い合いから愛国教育を考えるなど、筆者の鋭い分析が非常に面白いし、ためになる。文章も読みやすく良い本だと思う。