美しく気高い女性は罰を受ける
(2008-12-29)
裁判員に選ばれたら読み直すべき名著。人が人に罪を与え、罰するとは本質的にどういうことなのかがよくわかる。被告人席に立つ人が、もしこのHesterのような気高く強い精神を持つ、美しく優雅なレディであったなら、そのオーラが裁く側にいる「善人」たちの醜さや軽薄さを映し出す鏡になるなら、罪深いのは一体どちらの側かという強烈な問題提起こそ、ホーソーンの意図である。
姦通という行為が果たして緋文字という恥辱に満ちた罰に値するものなのか。独りでは姦通できないのに、女だけが屈辱を受け、優柔不断な臆病男は聖職を隠れ蓑にして人々から尊敬さえされている矛盾、女に愛される価値がないのに寝取られた復讐に燃える悪魔のような夫の醜い破滅が、見事な心理描写で静かな怒りとユーモアをこめてこれでもかと描かれる。美しい英語で。鈴木重吉氏の訳は細やかで優れているが、原文のリズムはもっと素晴らしい。
Little Pearl=パールちゃんの口から迸り出る英語の美しさにはっとする。'Mother, the sunshine does not love you. It runs away and hides itself, because it is afraid of something on your bosom. Now, see! There it is playing, a good way off. Stand you here, and let me run and catch it...'
このシンプルな美しさ、力強さ。パールちゃんにこめたホーソーンの希望が光り輝けば輝くほど、感動が深くなる。
キリスト教的世界観に裏打ちされた罪と背徳の物語
(2008-10-03)
ホーソンの作品を読むにはキリスト教の知識が必須だということはよく耳にするが、この緋文字は内容を簡単にいうと「性に対して保守的なニューイングランド(植民地時代のアメリカ)で起こった姦通罪」という分かりやすいものなので基本的な知識さえあれば十分楽しめる。
この本には序章ともいえる「税関」が収録されているのでとてもよかった。
「税関」があるのとないのとでは作品の雰囲気が大分変ってくる。
ホーソンはゴシック作品も手がけているだけあり、この「緋文字」もやはり全体的に暗く怪しい雰囲気が漂う。好き嫌いが分かれる本だとは思うが一度は読む価値があると思う。
訳文に関していうとやはり若干読みにくい感はあるが、以前のものと比べるととっつきやすくなったのではないかと思う。
新訳で読みやすい
(2008-05-12)
新潮文庫版がどうしても堅苦しく難しいので
こちらを購入しました。
現代風に訳されているので、非常に読みやすいです。
新潮版の方がやはり雰囲気はありますが、入門書と
しては、こちらでも充分いけると思います。
現代では考えられないような罪の裁きですが、心理描写も
鋭く、場面設定もなかなか凝っていていい。
大人の事情を知らないパールだけが、慰めで、この物語に
穏やかな光を差し込んでいます。
アメリカ文学を知るには必読の一冊ですね。
それぞれの罪の方式
(2007-08-12)
保守的な時代のアメリカでの、背徳に関する物語。
それぞれがそれぞれの方法で罪を背負っている。
他人の目=常識にさらされ、恥辱に耐え続けるヘスタ、自分の目=良識に耐えられなかった牧師、全てを分かった上で悪魔的な復讐心を止められない医師。
同じ事件の中にいる人々が、こうも違う結末を向かえるのは、当たり前のようでもあり、不思議でもある。
いかにも古典らしく、文章が格調高くて、結びの一文もいかにも結びらしい。
今考える不倫とあまりにも罪の重さが違うから、古臭いとも思ってしまうが、それでもいろんなことに対する「罪の意識」とその方法というのは、やっぱりあまり変わっていないとも思う。
苦悩
(2006-12-31)
真相は闇の中。読者の読み方次第でどんな受け取り方もできる作品。個人的には牧師の立場になって読み進めていた。自分の物語の真相はありますが、ここで書くのはルール違反なので書きませんが、物語全体に流れているのは牧師の苦悩でしかないと考えるからです。緋文字を胸に付けた、母親とその子供の生活はそのまま全て牧師へ注がれる。清教徒社会の中での彼の立場、苦悩を思うと、それも7年間、胸を打たれます。現代社会ではありふれた話であるかもしれませんが、社会の在り方で人間の苦悩は際立ってくる。その苦悩を背負いながら牧師は「牧師」という職業をまっとうしようとしている。その相反した行動によって、牧師は「牧師」となっていく過程なんかは、悲しすぎる話である。男と女、そして社会との繋がりを考える上で一つの視点を与えてくれる1冊です。