きっと、この地球から最も遠いところまで行けたポピュラーミュージック!
(2008-06-06)
このアルバムで聴けるこの音楽を、楽しむ人、楽しまない人、それぞれいていいと思うけど、これが、人類の歴史の中でこの地球から最も遠いところまで行くことの出来たポピュラーミュージックのひとつであることはたぶん間違いない。(これより遠くへ行けた音楽って?サン・ラ?)
ダウン・トゥ・アースの真逆な、「宇宙を感じさせる」「スペイシーな」「コズミック」なポピュラーミュージックは他にもいろいろある(エレクトリックのハービー・ハンコックやアース・ウインド&ファイアも、ジャミロクワイもそれぞれコズミック。)けれど、この「In A Silent Way」の「地球から何億光年か彼方ぶり」には驚く。でも、たとえばアース・ウインド&ファイアの音楽が、宇宙を感じさせつつ、いい意味でどこか土の香り、母なる地球の大地や文明の香りをさせているのに対して、この音楽も何だかもう完全に地球の重力から自由になってしまったような浮遊感・無重量感がある。そう、この音楽は「重さ」や「匂い」を取り除いて「(音の)色」「光」だけを残すことに成功していて、しかも驚くべきことに、カッコイイ。そして、他の宇宙を感じさせる音楽(エスニックではジャワのガムランとか、クラシックではホルストの『惑星』とか)と比較(いやな言葉だが)しても、やはりその辺りにおいてブッちぎりかもしれない。
☆が五つどころか、何億と見える、宇宙のミュージック。
そして、こんなにカッコいいアルバムですら、簡単に「ベストの1枚」と決めさせてくれないマイルス、恐るべし。「ビッチェズ・ブリュー」とこれと、どっちがいいとか、いつまでも、いつまでも決められない、この至福。ありがとう、マイルス・デイヴィス!
60年代マイルスの金字塔
(2007-02-21)
1970年ころからジャズを聴き始めた僕としては、マイルスのビッチェズブリューをリアルタイムに体験した世代である。つまりジャズが何度目かの地殻変動をきたした現場を垣間見る僥倖に浴したのである。しかしこのIn a Silent Way はすでに発売済みでマイルスの超話題作として登場したビッチェズブリューの衝撃ばかりがジャーナリズムをにぎわし、前作をかき消した感があった。もちろん前作の重要性も喧伝されてはいたが、その後「キリマンジェロの娘」を買って、ややがっかりしたことも手伝い(ただし現在ではキリマンジェロはすばらしい傑作だと思っている)、なんとなくIn a Silent Way は聞かずじまいになってしまった。また、ビッチェズブリューでジャズは終わったという批評家の言葉に踊らされ、それ以後50年代のハードバップを愛好するようになったことも一因かもしれない。ビッチェズブリューは確かにすごいのだけれど、かなり気合を入れて聞かなければならない。そんなわけでIn a Silent Wayは僕にとって未知のアルバムとして想像の世界の産物と化していた。しかしついに買ってしまった。禁断の果実よろしく、そこには目くるめく美の世界が広がっていた。そして60年代マイルスの金字塔とはビッチェズブリューではなく、In a Silent Wayではないのか。キリマンジェロ、イン・ザ・スカイと移っていったマイルスは、ビッチェズブリューで急にはじけたのではなく、In a Silent Wayという完成によって、60年代と決別したのだと思う。おそらく今後In a Silent Wayの音楽としての完成度の高さはますます重要性を帯びていくに違いない。
架け橋のイン・ア・サイレント・ウェイ
(2003-08-29)
24ビット・デジタル・リマスター、オリジナルと新しいライナー・ノート。そしてCDジャケットの縁を透明にして一番下にペットを吹くマイルスを鎮座させるというファンを喜ばせる仕様が随所に感じられ好感が持てる。
リマスターされた音の奥には昔LPレコードでは聴き出せなかった様々な音が復活してきて嬉しい。チック・コリアとハービー・ハンコックとジョー・ザビィヌルが一緒にプレイしていて、現在では信じがたいほど豪華。自伝で称賛しっ放しのトニー・ウィリアムスがパルスの様にリズムを刻み続け、ジョン・マクラフリンがそれに彩りを添えている。
エレクトリックに入っていく決断をしているようなマイルス。
架け橋のイン・ア・サイレント・ウェイ。色々考える。