旧黒澤組による「戦争犯罪」に対する回答
(2008-08-31)
戦争犯罪についての映画化は難しい。戦争中の殺傷は「犯罪」なのかどうか。旧連合国側と枢軸国側でもその認識は違うし。岡田資は捕虜殺害を重視されて死刑となったが、数百万人の日本人を殺傷した米軍の指揮者・カーティス・E・ルメイは、戦後自衛隊への貢献で勲一等を授与されている。死刑と褒章って、もの凄い差だと思うのだが。小泉監督も善戦しているが、やはり「事実」を追うことに一生懸命で「真実」に近づけていない。世界中で数多製作されている同テーマの作品もほぼ同じような傾向だろう。唯一、チャップリンの「殺人狂時代」で「真実」に近づいた瞬間がある。「一人殺せば殺人者だが、百万人殺せば英雄だ」というこのセリフ。チャップリンはこの作品がもとでアメリカから追放されてしまうが、「戦争の真実」を突かれた悔しさや妬みからだろう。岡田は殺人者でルメイは英雄。この本質を理解しないと、本作は難解なまま終わってしまう。本作は岡田の男気を語る映画ではない。戦争という殺し合いの中で、敗者がいかに裁かれるか、その「真実」の一端を感じ取ってほしい作品である。
出演者たちの演技へのオマージュ
(2008-08-20)
個人的に印象に残った点を記す(商品としてよりも作品として)。
・"コメディアン"藤田まことの起用は、黒澤作品での伴淳三郎、植木等、いかりや長介、所ジ
ョージを想起させ、必殺シリーズファンの私もかなり期待したが、抑揚をきかせ枯れた感じ
を出しながらも、気骨を失わない主人公を見事に演じていてとても良かった。劇中で何度か
歌うシーンもあり、うますぎる感がなくもないが、藤田ならではと思った。
・本作品の最大の収穫は、フレッド・マックィーンが見られたことだ。個人的には一番光って
いたと思う。全く父親を偲ばせる風貌(特に眉・目・唇の雰囲気)には感動した。法廷で岡
田中将から「Good Morning, Major!」と言われて一瞬見せた笑顔が忘れられない。日本映画
で外国人の俳優が印象に残った稀有な例として記憶されるべき作品だ。
・死刑台へと静かに歩む岡田中将が満月を見上げるシーンで、照明がTVドラマ並みに明るすぎ
ると思った(DVDで見たので余計にそう感じたのかもしれない)。黒白映画並みに明暗のコ
ントラストをもっと強調してもよかったのではないか。
・最後に、エンドロールに流れる音楽について一言。最後に主題歌がながれるのは日本映画に
よくあるパターンだと思うのだが、TVドラマではないのだから、映画作品としてオープニン
グからエンディングまで一貫したトーンをストリクトに保ってほしかった。本編が良くても
エンディングの主題歌で全体の雰囲気がガラリと変わってしまう作品が結構あると思う。
ラジオドラマに絵をつけたような映画
(2008-08-13)
良心的で丁寧な撮影に好感が持てますが、ラジオ・ドラマみたい。目をつぶっていても内容がわかります。立派な人物の立派な行為を立派に描いても、面白い映画にはならないのでは。命令を下した上官に責任があって、部下には責任がないというのであれば、アメリカ空軍の無差別爆撃も実行した飛行士たちには責任がない、それなの処罰したのはおかしい、という論理になるのではないでしょうか。
考えた
(2008-08-11)
産まれてからの自分の行動の全ては善いことも悪いことも含めて自分自身に責任がある。
つい人に責任を擦り付けてしまう弱い自分が情けなくなった。
人に優しくして生きたい、もっと自分に責任を持とうと思う。
映画は受動的なもので観る人で感じかたは違います。感動って色々な意味がありますからね。
こうした映画を世に出した関係者の熱意を感じる力作
(2008-08-09)
黒澤明監督の弟子という肩書などなくても、もう名匠の域に近づきつつある小泉監督だが、助監督時代から20年近く温めてきたという脚本は、戦争を、それも中将という位の高い軍人の生きざまを通じて、それも法廷劇という閉鎖的な画を使って、反戦・平和と人間の尊厳を描くという非常に困難なもの。娯楽性にもスケール感にも乏しいこうした作品を世に出すには本当に良識ある映画人の苦闘があったのだろうと思う。まずは、こうした作品が世に出たことを日本人として誇りに思いたい。(イーストウッド監督の2部作を通じて、「日本人こそこうした映画を撮るべき」と思った人にはまさに福音のような作品です)
先にふれた画としての難しさもあり法廷場面の切り替わりだけでは時間の流れ/登場人物の感情の動きが伝わりにくく、ナレーションに語らせざるを得なかった点や、そのナレーターのうち、竹ノ内さんの語りが少々硬直的だったりと、満点とはいかない点もある。
しかし、毅然とした主人公の言動、見守る夫人の表情、懸命に主人公を救おうとする弁護士の献身、徐々に同じ軍人として心を動かされる検事、そして、助命を願いつつ絞首刑という判決を悲痛な面持ちで言い渡す裁判長など、日米どちらに偏ることなく、実話を通じて強くメッセージを投げかける映画全体の力をしっかりと感じた。
何度も見たい作品です。