月並みですが「傑作」です
(2008-07-26)
以前、他に書いたレビューを転載します。
意外と一部の玄人すじにも否定的な評価があるようですが、とにかく夢のような東宝シネ・ミュージカル。セットで作られたオフィスでの、大がかりなナンバー(“アメリカでは”)が素晴らしい。
出世の夢がやぶれかけて東京を去ろうかという男に、自分の田舎の魅力を説く女。しかし最後には、田舎の話を楽しみながら二人で都会で暮らしていこう、などという、うさんくさい(笑)解決策が輝いて見えてくる。高度成長期初頭の空気を、こういう作りものの中からでも感じ取ることが出来る。必見!
日本映画史上初めて製作された本格派ミュージカル。
(2008-05-24)
「嫌われ松子の一生」を観た時、これは日本に於いて極めて稀なミュージカルの傑作だなと興奮した。それくらいミュージカル映画は、日本の風土には似合わない不毛なジャンルと言えるのだが、それでも、過去にこのジャンルに果敢に挑戦した意欲作がなかった訳ではなくて、例えば加藤泰の「真田風雲録」や岡本喜八の「ああ爆弾」らが挙げられるのだが、それらがかなり斬新で作家性の強い作品であったのに比べ、今作はハリウッドテイストの軽やかで心弾むようなコメディ・タッチを狙って作られている。
高度経済成長期でのモーレツサラリーマンのヴァイタリティと悲哀に、帰国子女とのラブコメディをミュージカル仕立てにしてしまったのがいかにも東宝らしい(笑)。ハデさや賑やかさは同時代に作られていたクレージーキャッツ映画に一歩譲るが、黛敏郎&谷川俊一郎コンビによるマンボ、ルンバから民謡までも盛り込んだ楽曲たちは楽しいし、中でも、雪村いずみや益田喜頓ら総勢100人近くの出演者、ダンサーが歌い踊る「アメリカでは」は、多少ゴタゴタするものの壮観で、かなり頑張っている。フランキー堺や高島忠夫が働くオフィスとか、浜美枝がママのナイトクラブとか、近未来のSF映画を思わせる村木忍のセットデザインが印象的。
フランキーがやけ酒を飲んでいると、何故か植木等が登場、「これが男の生きる道」を聴かせると、それがいつの間にかサラリーマン哀歌のモブ・シーンに変わっていったり、ラストの大団円が、いかにもサラリーマン的慎ましやかで時代を感じてしまうが、日本映画で恐らく初めて本格的ミュージカルに挑戦した意欲作、映画ファンなら観てソンはない。