助け、助けられる。優しさあふれる映画
(2008-10-21)
とても温かい映画。観ていて癒されました。手違いで違った町に降り立った警察音楽隊。その日の宿を探すけれども見当たらない。そこにふと小さな食堂が。ディナという女性に出会う。彼女の周りには二人の男性が。一人は女の人の扱いの知らない青年で一人は失業者。そんな奇妙な三人組に助けられ一晩泊めてもらうことに。
警察音楽隊の隊長トゥフィークとディナの会話がとても印象的。お互いの人生を語り合ってわかり合っていく様子はとても愛にあふれてる。トゥフィークは律儀な男でディナは自由人。そんな二人の対比が助け助けられる人間関係を際立たせています。たった一晩の出来事だけど誰かが誰かを助け、助けられる。人間の優しさにあふれた映画だと思いました。
思わず身をのりだしたり、ぼろぼろ泣いたりする…そんなのばかりが名画じゃないですよね
(2008-09-16)
イスラエルに演奏にやってきたエジプトの警察音楽隊の男たちが、タイトルのとおり“迷子”になってしまい、地元レストランの気風のいい美人女将とその従業員宅に泊めてもらうことになったひと晩のなにげない物語。
新聞の映画評で沢木耕太郎が絶賛していたので見てみました。借りてはみたものの、きっとツウ好みのやたら渋い、あるいは独りよがりに難解な映画なのかも…なんて少しだけ心配もしながら見始めたのですが、まったくの杞憂でした。ストーリーは極めて単純で、うんと短く言ってしまえば先に記したような内容以上でも以下でもなく、事件らしい事件も起きず、意表を突くような展開もないのだけど、
なんだか妙にいい雰囲気なのですねこれが。一見がさつだけど情に厚い美人女将。彼女の控えめなアタックにちょっとよろめきながらも、
亡き妻に対する貞操を守りとおす真面目な隊長。最初はただの軽薄なプレイボーイに見えたけど
実はなかなかいいやつだったりする若い隊員。(地元のうぶなあんちゃんに女の子の扱い方を指南するくだりは、上品なコントのような趣でもあり、ほのぼのしたとてもいいシーンでした。)そんな普通の人たちが起こす、おおよそドラマチックではない小さな出来事たちを淡々と描いているだけなのですが、見ていてすごく穏やかな気持ちになりました。
政治的な知識など皆無の無知な私が見ても単純にに良いと思える佳作でした。
迷子のアラブ系イスラエル人
(2008-07-26)
あの複雑なパレスチナ戦争の当事者同士である、ユダヤ人とアラブ人が犬猿の中であることは周知の事実。1979年に両国の間に和平条約が結ばれ一時的な休戦状態に入った時代のお話である。しかし、イスラエルに呼ばれたアレキサンドリア警察音楽隊が空港についても出迎える車はなく、そこはかとなく冷たい空気がこのアラブの音楽隊の周りにのっけから漂っているのだ。
目的地とはまったく別の田舎街にさまよいこんでしまう音楽隊。足止めを食った街で一夜限定の民族交流が静かに始まる。民家や食堂に分かれて泊めてもらうことになった隊員は、(イスラム教徒のため)酒が飲めないのにワインをすすめられたりで、うまく雰囲気に馴染めない。作曲中の協奏曲を演奏しても場はどっちらけで、両国民の間にはよそよそしいすきま風が吹いたまま。
唯一、堅物の隊長を夜のデートに誘い出した食堂の女主人との間で、子供の頃普通に見聞きしていたアラブ音楽や映画の話題で盛り上がるシーンがある。実はこんなギスギスした関係になったのは、ヨーロッパ系ユダヤ人がイスラエルに入植しアラブ人に対する差別政策を行うようになってからのことだという。(公式HP参照)それまでは、イスラエルに元々住んでいたユダヤ人とアラブ人の共存はごく普通に成立しており、アラブ文化に接する機会も今よりも格段に多かったらしいのだ。
<エジプトの警察音楽隊を演じているのは、イスラエル全体で約15%を占めるアラブ系イスラエル人と呼ばれる俳優達である。権利も義務もユダヤ人と同じイスラエル人でありながら、イスラエル国内においては二級市民的にアラブの人と呼ばれ、アラブ諸国に行けばその所有するパスポートからイスラエル人と呼ばれ、どこに行っても居場所が得られないと本人達も口にする。>(公式HPより抜粋)そのどこにも行き場所を失った迷子の警察音楽隊(アラブ系イスラエル人)を通じて、人工的差別によって失われ行く異民族間文化交流を嘆いた作品なのかもしれない。
最優秀「南方英二」賞!
(2008-07-24)
堅物の団長トゥフィーク。団長に反抗的な若手団員カレード。困り果てた一行を助ける食堂の美しい女主人ディナ。食堂にたむろする若者たち。登場人物がそれぞれにそこはかとなくいい味を出してます。とくにチャンバラトリオの南方(みなかた)英二を渋くしたような独特のペーソスを醸し出しているトゥフィークと、彼を気に入ってしきりに気を引くディナの人間的魅力が印象的。
生き足のいいディナの女っぷり、そのディナとトゥフィークが過ごす一夜は、この映画のいちばんの見どころでしょうね。何の変哲もないけどキュートなエピソードとそのさりげない切り取り方の積み重ねが、言葉と信仰の違いや国家レベルの複雑な関係を乗り越えて、観てるこっちの親近感をじわじわと上げていく結果、観終わって登場人物たちとサヨナラするのがこんなに寂しくなる映画もめずらしい。
大学時代に流行ったイスラエルの青春映画『グローイング・アップ』シリーズ、『バグダッドカフェ』など1980年代の癒やし系ムービーの数々、荻上直子監督の『かもめ食堂』や『めがね』、笑いのツボと静かな作風が似ている北野武監督作品などが次々と観たくなりました。映画鑑賞欲を芋づる式に喚起する作品ですね。
オマー・シャリフやチェット・ベイカーが台詞に乗り、『Summertime』が重要な役割を果たしています。メガホンを取ったエラン・コリリンは若い監督ですが(34歳)、映画はもちろん音楽に対する愛情は相当に厚いものがありますね。こういった作り手の愛情がにじみ出ている作品は好きです。カンヌ映画祭はこの映画のために「一目惚れ賞」を特別に設けたそう。私なら絶対に最優秀「南方英二」賞だな。
一日の出来事
(2008-07-20)
この映画たった一日の出来事です 騒がしいコメディ映画とはむしろ逆で静かで静かな感動
そして笑いをささやかに堪能できる作品です 何もない砂漠の中に迷ってしまった警察音楽隊
そこで一日だけ泊めてもらえることとなった なにも無いところでも様々な人々の人生があり
笑があり涙があり愛がある 男が少年の恋助けをする所などニコニコしながら見ることが出来ます
ちょっとした舞台を見たような感覚でなごまされました。