心を打つストイックな映像
(2008-06-29)
映画監督になる前は画家だったロベール・ブレッソンの貴重なDVD-BOX第2弾。収録されているのは「スリ」、「バルタザールどこへ行く」、「少女ムシェット」の3作品。どの作品も台詞や音楽を抑え人間の内面を鋭く切り出したストイックな映像で綴られているところが最大の魅力(これがブレッソンらしさか)。そんなブレッソンの魅力の詰ったBOXだ。
「スリ」
何気ない日常においてスリに手を染めていく青年の日常の崩壊を描いた作品。初めて観たときに感じたのは、観終わった直後は「これだけ?」という物足りなさだったが、時間がたつにつれジワジワ作品の魅力がしみこんでくる不思議な感覚を体験した(これがブレッソンの素晴らしさか)。スリのテクニックを表現するストイックな映像。そして、心に残るラスト(ラストのマリカ・グリーンは最高の演技で当時16歳とは思えない魅力だ)。文句なしの逸品。
「バルタザールどこへ行く」
キリスト誕生の際に馬小屋に訪れる東方の三博士の一人「バルタザール」の名を付けられたロバを通して人間の欲や愚かさを描いた作品。キリストが人々の罪を背負ったように、バルタザールも人間の愚かさを見つめ続ける。だから、劇中に「聖なるロバ」と言われるロバが羊に囲まれて膝をおり横たわるラストは何とも神秘的。
「少女ムシェット」
個人的には収録されている3つの作品の中では最も気に入っている作品。
アル中で、密造酒で生計をたてる父親、病気の母親、極貧のなか学校でも孤独なムシェット(ナディヌ・ノルティエは野性的な目が魅力的)。彼女の同級生や教師に対する反発は身にしみてわかる。彼女に一時的にも唯一優しく接してくれた密猟者との関係は最後に彼女が「彼の愛人」だと言わしめるほど深い(特に密猟者がテンカンで倒れた時のムシェットは「聖母マリア」と重なる)。
母親が死に悲観にくれるムシェットの最後にとった行動も、ブレッソン流のキリスト教的な表現で自然に語られ、心に残る。
よきかな
(2008-06-15)
以前は入手困難でそれぞれプレミア状態となっていた3タイトルが装いも新たに再発されました。
うれしい限りです。いずれも過去のものより画質が格段に向上しており、時代の流れを感じさせます。
『スリ』過去に発売されていたものはジュエルケース(CDサイズケース)字幕焼付け、等
いささか難があったソフト化だったのですが今回は画質も大幅に向上、半世紀近く前の作品とは
思えないほどです。映像特典のブレッソンへの公開当時に行なわれたインタビューやドキュメンタリー
(主演のマルタン・ラサールやマリカ・グリーンを尋ねインタビューするというもの)など、
大変興味深いものでした。
ただし、残念なのは本ボックスセット中『スリ』のみPAL変換の早回し版であること(本作品は
モノローグが多いのですが聞きなれた主人公の声が鼻をつまんで早口で喋ってるみたいで残念)
これは意図されたものと思しいのですが、ラストの台詞が些か直訳調になっていたように感じたことです。
他『バルタザールどこへ行く』は以前スタンダード・サイズで発売されていたものにくらべ
今回の16:9収録版(所謂“スクイーズ”)画角が削られていました。マスターは定評のある
ヴォイジャー社のクライテリオン盤を使用(『少女ムシェット』も同じく)しているので
過去のものに較べ画質は向上しています。個人的には『少女ムシェット』が一等商品的に
問題のないソフトと思えます。いずれにせよブックレット、統一されたジャケットデザイン等
作品に対しての愛情を感じるので、是非第3弾『白夜』『やさしい女』が収録されれば最高)
を期待してやみません。
バケモノ級、待望のBOXセット!それに81/2、なんと情事も
(2008-06-06)
プレミア化していたタイトルばかりが並ぶ、ファン垂涎のセット。
このセットだけを買ってもいいくらいでしょう。
中身に文句なし。
(ちなみに、追うようにフェリーニの81/2がリリースされ、もう直ぐアントニオーニの情事もリリース!紀伊国屋さん、ありがとう。)
さて、タイトルばかりではなく、中身について書いておきます。
それぞれのプリントは大変美麗です。
スリはデジタル・ニューマスター(ブレッソン夫人とラルジャンの撮影監督が監修)、バルタザールはニュープリント版マスター使用、ムシェットはニューテレシネ版マスター使用です。
3本ともほとんど傷のない状態で観ることができます。
以前ソフト化されていたものも、それほど酷いプリントではなかったと思いますが、今回のDVDを観てしまうと、繊細な部分の映像の美しさが全然違うように思えます。
特典映像も豊富です。
BOX1に比べても充実していると思います。
スリにはブレッソンのインタビューを始めとした3つの映像、バルタザールには評論家のインタビュー、ムシェットにはゴダール製作のオリジナル予告編が入っています。
個人的には、それぞれ楽しめました。
特に、ブレッソンのインタビューと、バルタザールのインタビューが興味深かったです。
映画を理解するための助けになりました。
付属する冊子についても、それぞれ充実していると思います。
スリにはブレッソンを始めとしたインタビューが複数載っており、バルタザールには主演のヴィアゼムスキーの小説を参照にした解説が載っています。
両者ともに大変読み応えがありました。
タイトル、中身ともに推薦に値するBOXセットだと思います。
紀伊國屋にしては割引で買えば値段も良心的ですので、単発よりはこれに限ってはBOX買いが良いと思いました。
それにしても、このBOXセットはどこまで発展していくのでしょうか?
これから「3」以降も出るとすれば、期待が膨らむばかりです。
ラング、ムルナウ、ストローブ=ユイレ、そしていよいよブレッソン
(2008-05-10)
ここ最近の紀伊国屋さんのやる気には敬服します。
ブレッソンも多くの人が熱望していたものに違いありません。
過去に出たタイトルは全て廃盤でプレミア化していましたので。
更に驚くべきことに、これがシリーズ化、次回はバケモノ級BOXです。
これからも期待が膨らみます。
さて、ブレッソンほどの監督ついて書く力量に不安があるもので、作品評価については先輩諸氏にお任せして、このソフトの中身について書きたいと思います。
ここに入っている作品は、多くの方が切望しているタイトルとは違っているように思います。
むしろハズした感が強い。
なんでBOX2がBOX1じゃないんだろう?と思う人は多いでしょう。
ですが、個人的には、簡単に鑑賞することができないタイトルは寧ろ1の方に揃っているので、ソフト化にあたってはこっちが貴重だと思いました。
実際、ジャンヌ以外のタイトルは日本で公開される機会は大変少ないと思います。
プリントは概ね良好です。
ですが、ジャンヌは公開の回転よりも少々早くなっているということで、できれば公開当時の回転で観たかったです。
また、ランスロのプリントだけが少々程度が落ちるように思えます。
悪くはないのですが、最高とは思えない。
完全にクリアーなプリントで観たかったです。
特典映像については、ジャンヌ以外は予告編のみで少々手抜き感があります。
ジャンヌの特典は見ごたえがあります。
特にブレッソン本人の言葉は、最近復刊したシネマトグラフ覚書と呼応して大変興味深かったです。
付属冊子は、充実はしています。
ですが、物語の概略がなぜ長々と必要なのか分かりません。
映画を観れば分かることです。
個人的には、たぶん悪魔がを見ることができたのが嬉しかったです。
ある意味で、ラルジャンに通じる衝撃を内包しているように思えてなりません。
少々高くても買って観る価値はあると思います
※BOX2のレビューも書いてみました。
作品の評価じゃないですが。
(2008-02-26)
画像では分かりづらいですがシリーズ化されている様です。
大きな画像だと、BOXの下の方に小さく「1」の文字が確認できます。
座して続きのBOXを待ちましょう。
追記:
紀伊國屋書店のサイトにて「2」の情報を確認しました。
08年5月発売、気になる収録作は、
『バルタザールどこへ行く』『少女ムシェット』『スリ』
以上3作とのことです。