特殊な業界の「擬似家族」
(2008-05-06)
弱気で自分に自信を持てない少年、
業界での新鮮な体験と成長、
スターダムにのぼることによる栄光と驕慢の獲得、
仲間との確執、新しい力の台頭、
挫折と迷走、そして和解と再スタート。
「ブギー・ナイツ」で描かれる世界は、これまで
何度も描かれてきた物語だが、極めてユニークなのが
舞台がポルノ映画であるのと、主人公のモノが
とても立派だということだ。
監督ポール・トーマス・アンダーソンは、この
特殊な業界で働く人々を、丹念に誠実に描いていく。
ポルノを撮る彼らはプロである。
セックスは仕事である。
当然、遊び半分ではいいものが作れない。
真剣に腰を動かし、見せ場を作る。
時にはアドリブをいれる。
コンディションには人一倍気を使う。
主人公ダーク・ディグラーは自分に無理解な母親と
大喧嘩して家出し、そのままポルノ業界に足を踏み入れる。
劇中、彼は母親と和解することはない。
家にも帰らない。
孤独な彼にとって、帰る場所はポルノ業界にしかないのだ。
そこで働く彼らこそ、ディグラーにとってのファミリーである。
一人の少年の挫折と成長、彼を取り巻く擬似家族の優しさ、
かけがえのない絆がそこにある。
ポルノ業界の暴露映画ではなく、青春群像劇の傑作
(2008-03-01)
ポルノ映画の撮影場面なども出てくるが、内容は立派な青春映画。
1970年代に日本の映画界ではロマンポルノから多くの秀作が生まれ、それを作った多くの優秀なスタッフやキャストが後に一般映画でも傑作を作った。しかし、アメリカの映画界では一般に話題になった作品(「ディープ・スロート」「グリーン・ドア」など)はあるものポルノ映画のスタッフやキャストが一般映画で大きく成功することはなかった。そして即物的なセックスの描写のAVビデオに押されて日本でもアメリカでもフィルムによるポルノ映画は衰退してしまう。
そんなポルノ映画業界に身を置く人々の映画制作にかける情熱と家族的な結束の固さ、そしてお決まりだが若くして成功した者のドラッグによる転落を、ポール・トーマス・アンダーソン監督は優しい視点で愛情たっぷりに描く。映画の前半の主人公が成功への階段を登っていく過程は快調で、後半の転落の部分はちょっと重い描写が続くが、監督2作目でこれだけの作品を仕上げた力量には脱帽する。これだけの登場人物のキャラクターを描き分けて群像劇として成立させるのは大変な才能が必要であろうが、本作に続く「マグノリア」の成功でP・T・アンダーソンはロバート・アルトマンに並ぶ群像劇作家であることを証明した。
さらにキャストの多くはこの作品をきっかけにスターになっており今となっては凄い顔ぶれで、マーク・ウールバーグ、ジュリアン・ムーア、ウィリアム・H・メイシー、ジョン・C・ライリー、フィリップ・シーモア・ホフマン、ドン・チードル、ヘザー・グラム、そして・・・バート・レイノルズ!!!