20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
霊的な成長が語られている (2008-06-11) ジェイムズ・ジョイスは、神話的方法を用いて「ユリシーズ」という名作を産みだした。全面的にとは言えないかもしれないが、ロバート・レッドフォードもこの神話的方法を用いて、この映画を製作している。 端的に言えば、神話的方法とは、神話のテーマやモチーフを下地としながら、現代を舞台として物語をつむぐ方法である。 この映画の下地となっているのは、インドの聖典「バガバッド・ギータ」である。ジュナ(マット・デイモン)はアルジュナであり、バガー・ヴァンス(ウィル・スミス)はクリシュナである。ちなみに、バガヴァンとはインドにおいて聖人の尊称である。 バガー・ヴァンスに出会い、心に傷を抱えた天才ゴルファー、ジュナが自分のスイングを取り戻していく。それは、見失ってしまった自分の歩むべき運命という名の道を再び見つけ出していくプロセスである。ジュナがペナルティーを自己申告し、バガー・ヴァンスが去っていくシーン。それはジュナが勝ちたいという自我から生ずる欲望に打ち勝った瞬間であり、バガー・ヴァンスという師がいなくとも、一人で自分の運命を歩んでいけるようになったということを映し出している。ジュナが得たものは、自己申告せずに得られたかもしれない勝利よりもはるかに大きい。彼は自分自身を取り戻したのである。 字義通りでなく、象徴的に捉えたときに初めて、この映画の価値は出てくる。ゴルフを通して語られているのは、霊的な成長である。現代人の多くは、ジュナのように自分の歩むべき道を見失っている。膨張した自我が猛威を振るう現代において、心の奥底の何かを震わせるメッセージを多く含んだこのような映画の存在意義は想像以上に大きいと思う。