遠くにありて思うもの
(2008-07-15)
高知県中村市出身の異色脚本家・中村丈博の半自伝的作品を名匠・故黒木和雄監督が映画化。地元の信用金庫に勤める楯男(江藤潤)は、うだつの上がらないダメサラリーマンで、父親(ハナ肇)は外に女を作って別居中、何かと干渉してくる母親ときよ(馬渕晴子)との生活にも嫌気がさしていた。反対に、東京でお尋ね者になって中村に帰ってきた過去がある利広(原田芳雄)は、すねに傷を持つ自分を快く受け入れてくれた故郷がいとしくてたまらない。
誰と誰がくっついて、誰が誰の子を宿したのかなんて噂はもちろん、会社の営業成績まで近所にツツ抜けの楯男の生活。“プライバシー”などという言葉は、はなっからここ中村には存在しないのだ。人波に紛れて匿名で生活可能な東京スタイルは、楯男の目にはさぞや魅力的に映ったことだろう。一挙手一投足を細かく干渉される田舎生活は、B型の自分に言わせれば「うぜぇ」の一言。まして身内の恥までバレバレとあっては、東京脱出以外生きる道がないと考える主人公の気持ちは良くわかる。
そんな楯男とは対照的に描かれる利広は、中村に帰ってきても悪事を繰り返す根っからの“ワル”であり、しまいには○○○○まで犯してしまい中村にもいられなくなってしまう。旅立の日、田舎を出たがる男と田舎に帰りたがる男が駅のホームでばったりと出くわすクライマックスシーンは印象的だ。シナリオライターとなって都会生活にボロボロに疲れ果てた時、利広と同じように楯男=中村丈博もやはり故郷の中村に帰りたいと願うのだろうか。
遠くにあるからこそ思い出す故郷のありがたさを、パラドックスに描いた作品だ。
初々しい竹下景子!
(2008-06-07)
いつまでも余韻が残る作品です。
ビブラフォンの奏でる物悲しくて、優しいテーマ曲が耳から離れません。映画とマッチしていると思います。
都会から帰ってきて少し頭のおかしくなった役の桂木梨江さんが印象的でした。
20年ぶり観て結構カラミシーンが多いのに驚きました。
西日本の太平洋岸では昔は夜這いの風習がありました。
性に対する大らかさが残る地域です。
昭和30年代では、映画の様なことは有りえることだったかも知れません。
息子離れ出来ない母、女性関係にだらしのない父、ハチャメチャな隣人たち。
濃厚でまとわり付く様な人間関係。
そこから脱出しようとするとき、言いようのない懐かしさがこみ上げてきます。
最後のシーンは何度も繰り返し見てしまいました。
こんな優れた日本映画はそうそうないと思います。
昨今の薄味の映画に、アキアキした多くの人にぜひ見てもらいたい作品です。
1970年代のATGの代表作
(2008-04-24)
竹下景子のヌード目当てで見た作品ですが、実際、とても感動しました。映画脚本家を目指す地元の信用金庫勤務の主人公を取り巻く土佐中村の人々。特に村の中の、性のどろどろした関係の中で苦悶する主人公がとてもうまく描かれています。個人的には、夫が他の女に走り、一人息子を溺愛する母親役の馬渕晴子と覚醒剤中毒で廃人になった隣の娘を追い回すお爺ちゃん役の浜村純が印象的でした。黒木和雄監督に合掌。