『魔笛』と第一次世界大戦の組み合わせは如何に
(2008-02-09)
モーツァルトのオペラの舞台を第1次世界大戦の戦場に移して、『魔笛』が繰り広げられます。冒頭はCGによる戦闘機や戦車など大スペクタクルの映像が続き、どんな展開になるのかと思いましたが、後半は比較的室内での場面が多く落ちついて見ることができました。
俳優は全員オペラ歌手で、ルネ・パーペ演じる暗黒卿ザラストロやコロラチューラ・ソプラノの至芸を聴かせてもらった夜の女王の歌唱は流石に素晴らしかったです。演技も上手で驚きました。もっとも、セリフと歌は全部英語で違和感は残りましたが。世界中に配給する中では、ドイツ語でというのは難しいでしょうね。
ほとんど細かい所をのぞくと荒唐無稽といわれているモーツァルトの『魔笛』の筋書きを忠実に描いています。もともとこれはドイツ語によるジングシュピール(音楽劇)で、途中で夜の女王とザラストロをイメージする善玉と悪玉とが入れ替わりますし、狂言廻しであるパパゲーノの役回りの面白さなど関心をひく映像が続きました。タミーノとパミーナ、お茶目な鳥刺しパパゲーノとパパゲーナは十分に演じきれていたように感じました。ザラストロを中心にしている場所で、皆が作業している光景などは、秘密結社フリーメーソンとの関係も感じ取りましたが。
オペラで『魔笛』を鑑賞しようとすると機会もほとんどありません。有名な監督であるケネス・ブラナーも一生懸命撮っていますので、映画を鑑賞することでモーツァルトの善と悪、愛というテーマを感じとってもらってもよいのでは、という気がしました。
魔笛は過激なメルヘンである
(2008-02-03)
もともと魔笛のパワーはタミーノに渡されるときに説明されていた。人々の憎悪や戦意を喪失させ、この世に平和をもたらすもの。「すべての人は平和を望む」という信念を信ずることが、どれほど過激なことか、戦争を舞台にしたこの映画は愚直なほど真っ直ぐにそれを描く。そんな主張を新作の劇映画がしたら白けてしまう。理想を語るのにモーツアルトのオペラは見事な仕掛けだった。
「火の試練」とは、戦争という現実=死の炎の中を、理想=魔笛の力を信じて進むことだった。夜の女王が率いる青軍の前に全身をさらしながら、魔笛を高々と掲げて進むタミーノとパミーナ。理想=魔笛を信ずる二人の勇気がザラストロの赤軍に武器を放棄させ、青軍の戦意を喪失させる。
才人ブラナーはオペラ「魔笛」の過激な理想を映像で示してみせた。
映画なら
(2008-02-01)
英語でもいいし舞台が何処でもいいんですが、パミーナだけは美人でなきゃいけません・・・
注意!歌は「ドイツ語」ではなく「英語」です
(2008-01-30)
「魔笛」好きなので、映画を観、DVDの発売を楽しみにしていました。
現在、オペラの世界では、ザラストロ役といえばパーペといわれるほどの超一流バス歌手が、映画出演ということでとても楽しく観ました。
オペラでもそうですが、演出に関してあれこれ論じてもしかたないと思っているので、モーツァルトの「魔笛」という作品が、映画としてどう料理されたのかを楽しみました。
ただ、とても違和感を感じたのはすべて「英語」ということ。耳慣れたドイツ語ではなく、耳をよぎる英語は少々違和感を感じ、頻繁に集中を途切れさせます。
それは、映画を観たときに、すでに感じていたことなんですけど。
この演出背景とは凄い内容を選んだものだと思う
(2008-01-27)
大好きなモーツアルトのオペラ、それも魔笛となると、何をさしおいてでも観なくてはならない。
映画館で観たあと、DVDを購入して繰り返し鑑賞した。
最初の序曲の演奏から第一次世界大戦頃の派手な戦闘シーンが繰り広げられる。
第一次世界大戦で塹壕戦というと、私の場合「西部戦線異状なし」という昔の怖い怖い映画をどうしても思い浮かべてしまう。冒頭からこれはえらいことになったなと思ったが、戦闘そのものを生々しく描写したシーンはここ以外にはあまり無くて正直ほっとした。背景は荒涼としたものだとはいえ、やはり、いつも知っているいつものメルヘンチックな「魔笛」だった。
それにしてもこのオペラの演出として、この演出背景とは凄い内容を選んだものだと思う。今の時代のような無差別テロや世界各地で紛争の絶えない、この暗部を抱えた時代に製作されたことはとても相応しいし、意味のあることだと思う。愛と平和の普遍的なテーマを抽象的ながらここまで表せたことは、K.ブラナー監督と脚色のS.フライ氏の力が大きいと思う。もちろん出演者の歌唱やオーケストラ演奏も素晴らしい。特にザラストロのパートはつい繰り返し観たり聴いてしまうほどの秀逸なものだ。劇中のシーンで、丘の上の途方もなく多くの墓碑の前でザラストロが歌う合唱付きのアリアには、とても印象深いものがあった。
私はかねがね、叶うことなら、シカネーダー氏と夜通しお酒を酌み交わしてこの「魔笛」という芝居の真意というものを訊いてみたいと思っている。もちろん色々と横からアイデアを出したであろうモーツアルト氏も交えてだ。
本当は冗談芝居のつもりだったのだろうか? 200年以上も前から支離滅裂だの荒唐無稽だのと言われ続けて評価の非常に分かれるこの大衆向けのオペラが、今現在においてもまだまだ光彩を放ち、脚本を多少変えたとはいえこの映画のような傑作シネマオペラとして生み出されるのは本当に凄いことであり、考えてみるに益々興味は尽きない。