迫力、緊張感とユーモアが融合した、痛快無比な時代劇
(2008-09-08)
黒澤監督が娯楽に徹して作った痛快無比なチャンバラ時代劇。96分に凝縮された映画のどのカットからも目が離せない。若侍達を助けることになった三船敏郎演じる椿三十郎の腰の座った殺陣は見事。腕だけでなく頭のきれる、口は悪いが人はいい善を助けるヒーローだが、お城勤めなんぞ面倒くさくてできない一匹狼であり続け、城代家老の奥方から、鞘に入っていない抜き身の刀であり、本当によい刀は鞘に入っているもんですよ、とズバリ評される。桁外れの切れ者だが世をすねた本作のヒーローを演じられるのは油ののりきったこの時期の三船敏郎以外には考えられない。
他の俳優では敵役の室戸半兵衛を演じた若き日の仲代達矢が圧倒的にいい。三十郎と同じ抜き身の刀のような存在。ギラギラした悪の切れ者ぶりがかっこよい。黒澤映画における仲代達矢は、「影武者」や「乱」の大仰な演技よりも、本作や「用心棒」の悪役の方が断然いいと思うのは私だけだろうか。この二人が室内で対峙する場面、夜道を並んで歩く場面、そしてラストの雌雄を決する超リアルで超有名な決闘場面の緊張感は並々ならない。
脚本も息つく暇を与えぬ展開でサスペンスフル。1点指摘したいのは、緊張だけでなく緩和も用意されていること。代表的なのは、城代家老の奥方の、三十郎のペースを狂わすが憎めないのんびりぶり。そして小林桂樹演じる敵方の見張りが若侍に捕まって押入れに閉じ込められた後、いつの間にか若侍側の味方をするようになり、貴重な意見を言う時には押入れから勝手に出て、言い終わると自発的に押入れに引っ込む様子。そして城代家老の馬面。ユーモラスこの上ない。黒澤映画に欠かせない花は本作では当然椿だが、白黒映画での見事な使い方は見てのお楽しみ。迫力、サスペンス、ユーモアが融合した超一級の娯楽作品である本作は貴方の期待を決して裏切らないでしょう。
黒澤明の実力
(2008-08-31)
初めて観た時、湿潤温暖そして穏和な気候の日本でこれ程強烈な構図の映画が撮れた事に唖然となった。
ダリの「内乱の予感」を生んだ乾燥したスペインなら納得行くが、川合玉堂や横山大観の穏やかこの上ない風景画が生まれた日本でこれ程「激しい」画面構成を本当に作ったのか?
そう、画面にある物は全て日本にある杉木立ちや柱等だ。こういう極ありふれた物を使って垂直線を基本にした強烈な構図を作り出した。
そして垂直線の構図の強烈さを強調するのが白黒の対比で、白壁と黒塗りの柱と梁、白と黒の椿等々。
ここに黒澤明の映像芸術家としての実力がある。川合玉堂の様に日本の穏やかさを絵画に漂わせるのは勿論素晴らしいが、穏やかさの対極にある激しさの存在に気付き表現出来る黒澤明の実力、これが素晴らしい。画家を志し伊達に二科展に2回入賞したのではないのが分かる。
この強烈な背景の前で繰り広げられるのは難解な哲学的話ではなく、万人受けするお気楽娯楽時代劇で、その話の面白さにも驚く。
『椿三十郎』を観れば、黒澤明が娯楽映画監督としての才能だけでなく、芸術家としての才能も持った稀有な人物なのがよく分かり、世界中の映画人に影響を与えない方がおかしい。
さすが
(2008-06-21)
序盤からテンポ良く飽きさせない展開。昔、ビデオ版を購入してよく風邪で会社を休んでいるとき、眺める様に見ていたが、今でも侍姿の三船敏郎はカッコイイ。繰り返し見ても楽しめるので、DVDを購入。後悔しない傑作。
オリジナルが頂点であり、原点。
(2008-05-18)
「三十郎」再び登場。今度は若侍達のために助太刀する。三十郎の読みの深さは相変わらず冴えていてオープニングからワクワクしました。そして室戸半兵衛を相手の頭脳戦も映画の世界にぐいぐい引きずり込みます。「用心棒」でもたくさん斬ったけど今回は更にたくさん斬りまくるバイオレンスも忘れいない反面斬った後に「余分な殺生させやがって」と若侍にビンタします。実際にこの撮影時に若侍役の俳優達がこっそりラーメンの出前を頼んでいたのが三船に見つかっていて2重の意味でこのシーンのビンタは意味があるのです。実際の三船はスタッフ達と同じものを食べ器材の片付けも一緒にやったと聞きます。
「用心棒」より短い上映時間にも関わらず複雑な頭脳戦と多くなった登場人物。でもすっきりまとめたのはやはり脚本と監督の手腕によるものが大きいと思います。
時代劇の楽しさが詰まってます。
(2008-05-05)
時代劇の楽しさが詰まった作品です。単純に「おもしろい」。いい映画です。若かりし頃の若大将や青大将が出ていますが、三船敏郎の凄みや色気、かっこよさには敵いません。三船敏郎の存在感は画面から溢れ出さんばかりです。男汁噴出しています。いい役者さんです。
また衝撃のラストシーン。仲代達矢も用心棒に引き続き、敵役として出てきますが、いい悪役です。目が悪です。そして三船VS仲代の衝撃のラスト。瞬きすらできません。
ほんといい映画です。難しいことは関係なく、おもしろさを感じることのできる痛快娯楽作品です。