演劇映画
(2008-12-05)
82年の「セーラー服と機関銃」。冒頭、何も映し出されていない画面で雨の音から始まり、映像が始まるとフロントガラスに垂れ下がるドナルドダッグ、車のインサイドからの映像が妙に目立ち、薬師丸扮する主人公、泉の登場シーンはなぜかブリッジをしながらという奇抜さ。冒頭のインパクトで客を引き付ける効果は絶大。話が進むに連れて奇抜さは減っていき、これは、まあ意図的に、こういうもしかしたらあるかも知れない非日常をインパクトとして描いた脚本なのでこう言ってしまっては最初の設定からして成り立たなくなるが、非常にチープでご都合的な人物関係、仲間が死ぬ前の必ず心をくすぐられる話の設定作りや、この時代ならではの死の美学みたいな映像表現は今ではお粗末感が否めない。そしてスラップスティックコメディの様な変な展開を盛り込み、「か・い・か・ん」を口走るまでの所は演劇の様なアンリアルな間がある。そして最後でまた奇抜さが炸裂する。薬師丸が歌う名曲「夢の途中」の心地よさで誤魔化された様な気にもなる。子供でも無く大人でもない高校生、泉の少女の微妙で繊細な心の動きは見事であるし、それを演じる薬師丸ひろ子の素の魅力と演技の才能が絡み合った姿は素晴らしいとしか言い様が無い。結局は主演、薬師丸ひろ子とその他サポートメンバーによる薬師丸ひろ子による薬師丸ひろ子の為の映画としか見えない。これでいいのだという感じでしょうか。
色褪せない作品
(2008-08-24)
ほぼオンタイムに作品を見たはずなのですが、当時はさして感動しませんでした。歳をとった今、久しぶりに見ると薬師丸ひろ子という素材と作品のマッチングの良さが光ってきます。最近「三丁目・・」で才能を発揮している薬師丸ですが、この作品は、彼女自身の年齢とももっとも合致したものではないでしょうか。気に入りました。
薬師丸ひろ子の「母性」
(2008-05-14)
公開当時、映画館へ見に行って以来。懐かしかった。
当時中学1年生だった私も今年で40歳になる。この年になってあらためて見直してみると
この映画はただのアイドル映画とは一線を画す作品だと思う。名作だとは口が裂けても言えないが、当時人気絶頂だった薬師丸ひろ子の人気だけに頼ることなく、それなりのこだわりを持って丁寧に作られた映画だ。
荒くれ者のヤクザ達が短期間で(組長とはいえ)ごく普通の女子高生、星 泉に心を開き、自分の胸の内をさらけ出すようになるのは、彼女に「純粋さ」と何より「母性」があったからだと思う。正直、薬師丸ひろ子の演技は非常に拙いものだったと思うが、彼女には「純粋さ」「母性」の雰囲気が十分に出ていた。そういう意味では薬師丸ひろ子は「星 泉」像を完璧に表現していた。
脇役の俳優陣の演技が素晴らしい。特に渡瀬恒彦、佐藤 允、特に柄本 明の絶命シーンは胸に迫るものがあった。
そうバカにした映画でもないと思う。薬師丸ひろ子全盛期をご存じない世代の方でも十分鑑賞に堪えうる。
泉が「女」になる物語 それは80年代的女性像をも用意していました
(2007-07-17)
丁度今職場の高校で学校祭シーズンで、高校生の生の躍動を描いた映画を見続けて本作に辿り着きました。懐かしかったです。そしてリメイクもされた今現在の眼差しで見て分かったことがありました。トップアイドルだった薬師丸ひろ子をクレーンで吊してコンクリートにぶち込んだり、ブリッジさせて“カスバの女”を唄わせたり、北村和夫にベタベタといやらしく体を撫でまわさせたり、「いい匂いです」と組員が胸に顔をうずめたり…。主題は明らかです。この映画は少女だった泉がマユミの様な成熟した女性になる通過儀礼の物語なのです。だから不似合いに真っ赤な口紅をつけ、亡き父親に決別して最後に佐久間に口づけをし、ラストでもセーラー服をまといながら実はその内に「大人」を秘めて子どもと接していく訳です(それは不釣り合いに真っ赤なハイヒールと、地下鉄が走りM.モンローの如くスカートが膨れあがるシーンを同時に展開させていることから分かります)。
マユミは70年代に泉が生きていれば辿ったであろうもう一つの可能性を示して実に興味深い存在です。彼女はきっと相米監督たちがおくった70年代の群像の中で出会ったであろうアフターヒッピーの女性を体現するものです。しかし時既に80年代になり、10代の少女が母・恋人・大人として期待される時代が到来していました(いみじくも薬師丸ひろ子は『ねらわれた学園』で1人の男性への思いを通して人々の運命を任せられ、さらに『風の谷のナウシカ』では一少女に全世界の運命が託せられていました)。この映画も薬師丸ひろ子という時代を象徴する1アクトレスの最も旬な時期を見事に活写し、そして彼女は順風なキャリアを振り切って大学進学、そして誰もがびっくりした玉置浩二との結婚という選択をしていきました。これもまた1つの見事な80年代的女性像。その結節点にこの映画があります。そんなエポックメイキングな傑作です。新しい世代の方々にも是非!
やはり名作!
(2006-12-02)
リアルタイムで薬師丸版を経験した者として、TVでの長澤版「セーラー服と機関銃」を見て、やはり薬師丸版をもう一度見てみたくなり購入しました。
長澤版は、かなり映画に忠実に作られているなあと思っていたのですが、冒頭の「火葬場でのでんぐり返りシーン」に始まり、中盤の「深夜、バイクで暴走するシーン」から、終盤の「機関銃をぶっ放してカ・イ・カ・ンと叫ぶシーン」「佐久間の遺体にキスしての。(マル)」、そしてラストのマリリンモンロー張りのシーン等々、忘れていた名シーンのオンパレードに、思わず当時の色々なことを思い出してしまいました。
亡くなってしまった相米監督の長回しの撮影も素晴らしく、薬師丸版をリアルタイムで経験した人は元より、ご存知のない「セーラー服と・・」ファンの方もTVと比較しながら楽しめる内容の映画だと思います。