心の断面図集
(2008-11-05)
ロスアンゼルス、24時。ハイウェイで起こったひとつの交通事故から、物語は始まります。このひとつの「クラッシュ」が、さまざまな人種・階層・職業の人たちの心に連鎖反応を引き起こすヒューマンドラマ。人種のるつぼ、アメリカならではのドラマです。最近になって、「格差社会」などと叫んでいる「一億総中流の日本人種」にはインパクトは薄いかもしれませんが・・・。
「触れ合いだよ。街中を歩けば、人と体が触れたり、ぶつかったりする。でもロスじゃ、触れ合いは皆無。人々は金属やガラスの後ろに隠れている。みんな触れ合いたいのさ。衝突し合い、何かを実感したいんだ」
人種や職業、階層のさまざまな人びとが暮らす大都会ロス。登場人物である刑事、自動車強盗、地方検事とその妻、TVディレクター、鍵屋とその娘、病院の受付、雑貨屋の主人。その一人一人がその人の人生において主人公であり、また誰かと関わるとき、善と悪との狭間でゆれながら生きています。愛と慈しみを求めながら、悲しみと怒りに直面する。思いもよらない、しかし連鎖の糸でつながった登場人物たちに、そして「天使の町」ロスに、愛と憎しみの両方が降り注ぎ沁みてゆきます。
「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本でアカデミー賞にノミネートされ、一躍注目を集めた劇場用映画初監督のポール・ハギスは、ハリウッド映画にありがちなこれ見よがしなテクニックや過剰な仕掛けの見せ場を排除し、登場人物の内面をあざやかに演出し、陰影に富んだ人物像を描き出しています。
考えさせられる
(2008-10-29)
冒頭から人間の嫌な所ばかり書かれたフラストレーションのたまる事件の連続で、見続けるのが辛かったです。演出は控えめ、話の全貌がなかなか見えない、また終盤鬱積した感情を吹き飛ばすような胸のすくシーンがあるわけでもないので、映画に娯楽を求める人には不向きです。内容はマグノリアタイプの群像劇ですが、衝突の内容が殆ど人種差別を起因としたもので、ワンパターンに感じられました。アメリカの抱える問題を真摯に書いてはいるのですが、私には「考えさせられる」以上の映画ではありませんでした.人生は映画のように甘くないぞ、と映画に言われてるようで……。
ものすごく上品な仕上がり
(2008-10-29)
あらゆる人種があらゆる階層で、混沌として同居するアメリカ。
それぞれの、心がえぐられるような問題を、
これだけ大勢のキャストを使いながら分かりやすく上品にまとめた問題作。
どのキャラクターにも共感する部分、相容れない部分を描き出し、
その奥深さに感情移入し、キャラクターとともに落涙することができる。
しかし、あまりにも上品すぎるのが難点とも言える。
クライマックス〜ラストでは、何故か高層ビルの安全な自宅で、
夜景を眺めながら社会問題映画を近しい人と論じながら見ているようなイメージが湧いてきた。
遠いところから見下ろしているようなそんな気持ちが最後に残った。
上品な映像に完璧な脚本、そして上質の音楽。
それがこの映画の最大の長所であり、わずかな欠点でもある。
名作
(2008-10-10)
タイトルとエンディングが見事にマッチした映画。
人種差別やセクハラなどなど複雑な問題を絡め、様々な人々の人生を それぞれ少しずつ絡ませていく複線の描き方が絶妙。
一つ一つのエピソードはそれぞれ独立していつつ、エンディングに収束しており、よく練り込まれた作品。
見終わった際にはまるで完成した巨大なジグソウパズルを眺めたような気分になる。
名作と言っていいだろう。
アメリカ映画らしくないが、アメリカを良くあらわしている
(2008-07-28)
登場人物が絶妙な具合に絡まり、憎んだり認めたりしている。いわゆる悪役はいない。逆に善役もいない。アメリカ映画には珍しいが、だからこそ今のアメリカの姿をよく表しているのかもしれない。
憎しみはちょっとした思い込みから来て、結果は大きく絶望的にすらなる。決して「誰か」「何か」が悪いわけではない。それが人間の一側面。
そんな感覚になった。