緊迫する106分
(2007-10-13)
映画が始まると暗い森が映し出され、続いて画面に銃口が向けられ弾が発射される。その瞬間、観る者があたかも催眠術にでもかかったかのように映画の世界に引き込まれる。銃の発射の後、観る者は雨の中を走る男の視点となり、神経を逆なでするようなエンニオ・モリコーネの音楽とともに緊迫の世界に入り込んでいく。もう、このくだりだけで、監督のジョゼッペ・トルナトーレの才能は十二分に発揮されている。
そのあとも、何の理由かわからないままに、警察署に拘留され、尋問を受ける作家オノフ(ジェラール・ドパルデュー)の奇妙な言動や過去の記憶、オノフの書いた作品を諳んじることの出来る警察署長(ロマン・ポランスキー)の厳しい追及は作品を緊張感と迫力でいっぱいにする。2人の役者の壮絶ともいえる演技のぶつかり合いも、観る者を嫌でも釘付けにして作品から離さない。
そして、オノフの欠けていた記憶が埋まる衝撃の瞬間に観る者は緊迫の世界から解放されると同時に作品の真の意味を知ることになる。この辺の演出は拍手喝采もの。
何度と観返せば、シーン毎の意味、2人の会話の意味を別の角度から理解することもでき、あじわいも増す素晴らしい作品だった。
不条理の「くびき」からの解放、、、。
(2007-10-07)
冒頭から「ただことではない」状況が主人公をとりまく。嵐の中を疾走する小説家オノフ(ドパルデュー)、しかし彼が何から逃れようとしているのか誰にも判らない。
警察に誰何され連行された先で、彼は署長(ポランスキー)と対決する。尋問の中で次第に明らかにされるオノフの過去、そして身に覚えのないの容疑。
合いそうで合わないジグソー・パズルのような展開にいらだち、緊張を強いられつつ、観客はオノフとともに署長の詰問を受ける。
針のない文字盤だけの時計、通じない電話、白紙のままの供述調書、インクが固まって書けないボールペン、雨漏りで水浸し、そして取調室も留置場もない警察署が不安と緊張を高める。
モリコーネの凄絶な音楽がそれを増幅し、クラクラとめまいを感じるほどである。
やがて、一つの事実がオノフの記憶に蘇り、彼はやっと状況を悟る。やさしい眼差しで小さくうなづく署長、静かな、静かな感動のクライマックス、終わってみると不条理映画でも何でもなかったのだ。
キワモノにもなりかねないテーマを荘重に描いたトルナトーレ渾身の名作、何度観ても感動してしまう。
[蛇足] ポランスキーがいい。チャイナタウンで演じた殺し屋の役もゾッとするほどハマッていたが、ここではまさに鬼気迫る役柄を演じ切っている。
観終わって、ポランスキー監督の演技にだまされた自分に気がつく
(2006-05-13)
ドパルデューとポランスキーの役柄がダブル瞬間に意味がわかる映画なんですが、それは編集がうまい。音楽もモリコーネがすごく良い音楽をつけております。
サスペンス調の音楽なんで、意外とどつぼにはまるかもしれません。
この意味がわからないくらいがちょうど良いのです。
ポランスキー監督が、もし作ったなら、もっとすごいものになっただろうな、と常に思わせるところは監督の計算が入っております。また、ポランスキー監督も演技がうまいんだ。「テナント」から帰ってきたあとのポランスキー監督と同じような境遇にドパルデューがはまるというべきかな。
最後に「前向き」な映画です。でもね、どうせなら、「テナント」のDVD化の方が怖いだろうな、とふと考えてしまう私でした
こんな書き方をしてもお勧めな映画ではあります。