人生にめざめた詩人との出会い
(2008-04-15)
はたらく意欲もなく無学な若者のマリオは漁師の父のもとでぶらぶらしている。ある日、チリの亡命詩人のパブロ・ネルーダが島に滞在するようになった。マリオは彼への郵便物をとどける仕事をえた。
郵便を手渡しするうちにしだいに親密になり、詩人は詩の作り方の一端をおしえてくれる。マリオは島内きっての美人の娘をみそめて詩をおくる。というような素朴で叙情的な物語がこころにしみる音楽とともに流れる。マリオは自転車をひいて山道をのぼっていく。山と海のながめもひときわ美しく全編が詩のような映画だ。
マリオ役のマッシモ・トロイージは若者を演じるには老けすぎているが、適役で他にひとを見つけるのはむつかしいかもしれない。ネルーダ役のフィリップ・ノワレは近づきがたい風貌の中に親しみやすさをのぞかせてすばらしい。
マリオは共産党の大会で、ネルーダにささげる詩を朗読する機会をえたが、大会の混乱の中で命をおとす。無自覚だった若者が、偶然の出会いから詩にめざめて、生きる意味を見出したのだった。彼は詩を残すことはできなかったが、名のある詩人だけが詩人ではない。職業詩人よりも詩人であるひとは少なくないだろう。
ネルーダ(1904-1973)は国際的に名を知られた共産主義者で政治家。1971年にノーベル賞を得た。ねず・まさし氏の「現代史の断面」にも名が見えて、トロッキーの暗殺に失敗したシケイロスをチリに亡命させた、とある。筆名はチェコの詩人のイアン・ネルーダからとった。
目には見えないけれど
(2008-03-01)
余韻を残して(映画からも地上からも)去っていたマッシモ・トロイージが美しい。
人の心は目には見えないけれど、詩人の言葉が心を表現し、
詩に目覚めた男が自らの心も発見していく。
人にも己にも誠実に、互いに信頼していくこと、
別れや死を超越し、生きることの幸いを強く訴えかけられます。
人の値打ちは(当然ながら)財産や外見ではないことを思い出しました。
超大作の映画だけが名作でないことも。
何度見ても素晴らしい
(2008-01-25)
私はこんなに素敵な映画をほかに知らない。
きっとこの映画を見たら、誰でも詩を読んだり、書いたりしてみたくなるはず。
ネルーダが語る、詩についての何気ない一言がとてもいい。たとえば詩人になるには?この質問に対する回答。
ラストはとっても切なくなるけど、あの余韻がなんとも言えず素晴らしい。
音楽と海
(2008-01-13)
何とも言えない切ないメロディ。
主人公の感情に合わせてリズムを変えたり、テンポを変えたり。
学生時代映画のゼミで、この映画の音楽の使い方に関して力説したのを覚えています。
切ない映画ですが悲しくはありません。
ナポリのきれいな海のように、心が澄んでいきます。
Il decimo Suono di ferite lacere
(2007-10-17)
主人公はイタリアの片田舎の決して恵まれているとは言いがたい島に生まれた、国家にも仕事にも自分にもヤル気のない人間で、今でいう所の駄目人間といっていい若者。なんだけど、チリから亡命してきた世界的詩人『パブロ・ネルーダ』にふとしたことから郵便を配達することになって少しずつその詩的な目線と触れ合うことになり、自分のまわりにある様々な詩に気付いていく。小さな島の景色や穏やかな音楽に彩られている、その詩的な目線をおぼえていく過程がとてもいい。
あと、これはとても微妙なんだけど、後でとても哀しくなるのが複雑だった。いちばんハッピーなままで終わって欲しかったような気もする。それではハッピーに溺れているような気もする。
とはいえ、おれは詩人と称する生き物達がとても好きなので、この映画はいい。べつになにも残らなくたって詩人は詩人なのだ。あとはなにか好きなように思えばいい。