ケイト・ブランシェットの素晴らしい演技しか評価できない作品
(2008-06-30)
映画が始まってすぐ、裁判所をでたヴェロニカ・ゲリンが信号待ちをしている車で襲撃される瞬間(観ているものはガラスの割れる音と悲鳴だけで終わる)で過去のヴェロニカの行動に切り替わる。この展開を観てなかなか面白いかもと期待したのが間違いだった。
確かに、麻薬組織の懐に飛び込んでいくヴェロニカの行動力や襲撃される恐怖を表現するケイト・ブランシェットの演技は冴えにさえ観る者をグイグイ作品に引きこむ。
しかし、その作品に中身がない。98分の作品中ヴェロニカ襲撃と死後の部分を除く約60分で麻薬の恐怖やヴェロニカの麻薬撲滅運動、彼女の記事、主張が全面に出ているのかと思って期待したが、さにあらず。ギャングの抗争、裏切り者に対する制裁やヴェロニカに対する脅迫の銃撃、そして暴行と全編暴力に覆われている。
そこには同じく麻薬をテーマにした「トラフィック」のような社会派的(麻薬の恐怖と売る者の論理等を対比的に描いた)な描写は微塵もなく、暴力を中心としたサスペンス?(ギャングとヴェロニカの駆け引き)が中心となっている。もう少し、生前のヴェロニカの主張と当時のアイルランドのおかれた最悪の環境を語って欲しかった(特に後半20分のヴェロニカ襲撃シーンの繰り返しは不必要(冒頭で観る者はしっかり彼女の恐怖を心に刻んでいる)と思った)。
しかし、製作がジェリー・ブラッカイマーだから、所詮社会派なんて期待しても無駄だったのかもしれない。中身のある作品より暴力を売りにする(見世物にする)ブラッカイマーにはこれが限界なのかも。
女性記者
(2008-05-03)
アイルランドの実在した女性記者の生涯を描いた作品。実話。麻薬組織にまさしく、ペンで挑みかかった彼女の姿勢には感動を覚える。しかし、その取材の切り込み方が命を懸ける割には単純すぎる。もっと慎重にすべきであろう。これじゃ、ただの女を武器にしていると思われても仕方ないのでは。命を懸ける取材対象を見つけたのであれば、もっと違う切り込み方ができたろに。しかしながら中だるみもなく、一気に見させる映画です。社会に対して自分の命を懸けて挑んだ記者魂を十二分に感じることができます。
ペンは剣より強し
(2008-03-10)
新聞というメディアの影響力の大きさ、その影響力ゆえに奪い取られてしまった
一人の女性記者の命、そしてその命がきっかけとなって変化を遂げた社会。
硬派なテーマなためか敬遠されがちだが、目をそらさずに見て欲しい実際の事件を
元にした社会派ドラマの傑作。
真実の追究のためには死をも恐れなかったヴェロニカは、アイルランドの人々の間
では今なお“勇気の象徴”として語られている。この作品を見た人の中にはそんな
彼女の描き方を批判する向きもあるかもしれない。強引な取材を続けた記者が自爆
しただけ、記者像が美化されまるで英雄のようだ、ケート・ブランシェットを
見せるための作品…云々。
確かに映画として脚色されている箇所も多々あるだろう。しかしながら、この作品が
描きたかったことはただひとつじゃなかろうか。それは、美しい記者像を描きた
かったわけでもなく、ケート・ブランシェットを見せたかったわけでもない。
本当に描きたかったのは、勇敢さを持ったある女性記者の死が、アイルランド人の
正義を目覚めさせ、犯罪を阻止するための憲法改正へと導いたという事実だけ。
いい映画でした!
(2006-02-22)
小さな子供までが麻薬づけになっている
冒頭の場面が、とても痛々しく衝撃的だった。
「この現状をなんとかしたい!!」
そんなヴェロニカの気持ちに共感できるからこそ
勇気も行動力もない私は彼女の生き方に感動した。
アイルランドに実在したジャーナリスト、
ヴェロニカ・ゲリンさんのすばらしさ!!
脅されながらも初心を貫く姿、その強い意志!
信念を持った、彼女の生き方に触発された。
そして、彼女の行動が世間を動かしたこと。
彼女の死で、国や法律が変わっていったこと。
自分の命と信念、人はどちらを選択するだろう?
(私には到底、彼女のような真似はできない・・)
いつもは忘れているけれど、情熱に満ちた
個人の持つ力は、とても大きいのだと気付かされた!
伝記映画のむずかしさ
(2005-10-25)
この映画でうかがわれるヴェロニカ・ゲリンの行動には最大限の敬意を抱くが、映画としての面白さは少ない。手っ取り早く面白くするには、ギャングの世界を全面に押し出せば良いのだろうが、テーマ上そんなことをするはずもなく、かといって他に見せ所はない。何とも微妙な温度の映画になってしまった。勿論、映画を越えて訴えるものがあるので、良い映画と言うこともできるのかもしれないが、それは映画の作り手ではなく、ヴェロニカ・ゲリンが偉大だったということだろう。伝記映画は、作る方もだが、観る方も評価が難しいものだ。