民子三部作シリーズ
(2008-03-27)
山田洋次監督の「男はつらいよシリーズ」も代表作として素晴らしいが、
私のお薦めは、本作を含めた「民子三部作シリーズ」である。
「故郷」「家族」「遥かなる山の呼び声」が、そうである。
それぞれにストーリーは独立したものとなっているが、倍賞千恵子の民子の設定、
「家族」で最終地として向かう北海道の設定は「遥かなる山の呼び声」につながります。
大阪万国博が開かれた年に撮影されていますので、もう37年前の作品です。
博多・福山・梅田・東京など今は見ることが出来ない駅や街の風景が
随所に出てきますが、これだけ見ても懐かしいロードムービーです。
山田ワールドにどっぷり浸ってください。
ラストより途中が泣ける
(2006-03-24)
前田吟の息子と笠智秋の老いた父との駅での別れのシーンが哀しい。笠智秋の「おまえも元気でなぁ、・・・・もう会えんかもしれん」だけでも、涙がちょちょぎれそうになるのに、その言葉にハッとなり、パッと視線をあげた息子の目には・・・。その後、いまいましそうに車を運転する姿も、その気持ちわかるわかるという感じ。山田洋次はああいう庶民の気持ちをきちんとわかっている所が凄いと思う。
嗚呼!倍賞千恵子(その2)
(2005-12-17)
「1970年」の日本の春を見事にきりとった問題作、昭和45年ではなくあくまでも大阪で万国博覧会が開催された「1970年」の映画、「クレヨンしんちゃん、モウレツ大人帝国の逆襲」とともに70年代初頭の日本を回顧するためには無くてはならない映画、
映画として類稀な熱気をはらんだ最高の作品だとは思うのだが、ご都合がよすぎる物語、子供の就学に間に合わせるのでもないのに4月上旬に北海道へ行く、わざわざ国鉄(現在のJR)利用、子供の急病に救急車を呼ばない、などなどに物語自体は破綻しているともいえるのだが、見始めればけっして目を離すことのできない何かに取り付かれたような異様な迫力がうむ映画を見ることだけが呼び起こす興奮はまさに最高の映画だけが持つものともいえる、出演者とスタッフたちの今この作品を撮らなければ、という激しい情熱がフィルムに結晶したとも表現できるとおもう、
出演者たちの俳優らしさをできるかぎり排除したような演出もドキュメント・タッチの迫力の原因、そんな中で登場するだけで喜劇役者であることを全身で主張してしまう渥美清の出番は不用だったのではないだろうか、森川信の嫌味な旅館主人のうまさと好対照だと思いました、
山田作品、故郷・家族・遥かなる山の呼び声、は倍賞千恵子演じる民子三部作と解釈できるでしょう、音楽で同じ旋律の引用が繰り返されていることも重要とおもう、
劇中盤の教会シーンの直前に上野・下谷神社の祭礼が映る、祭礼は通常5月11日頃であるから、劇の4月上旬の設定にはずれがある、雪の消えないうちに北海道から撮影をはじめ、上野のシーンは5月に撮られたのだとおもう、
70年高度成長期の日本を描いた傑作!!
(2005-11-03)
北海道に辿り着いた後、男泣きの夫(井川比佐志)に妻(倍賞千恵子)が声をかけるシーンには、涙がとまりませんでした。
亭主関白に見えて実は気弱な夫、そんな夫を支えるしっかりものの妻、穏やかな、でも時に息子を叱咤する祖父(笠置衆さんが素晴らしいです)、幼い男の子とその妹(赤ちゃん)の家族が長崎の小島から北海道の開拓村まで日本縦断の旅をする。今風にいえば全編旅のロードムービーです。ドキュメンタリータッチで高度成長期1970年の変わり行く日本の風景、その時代の人々を描いた傑作です。現地の人々(素人)を多数出演させた山田監督の意図が見事に効果を上げています。悲惨な物語でもあるのですが、登場人物それぞれの気持ちが痛いほど伝わってきて、いつの間にか映画の中の人々と同じ気持ちになっている。旅の途中で出番は少ないながら出てくる前田吟扮する次男坊の気持ちなどなど抑制されてはいるが、でも丁寧に描かれているからでしょう。倍賞千恵子さん、この時代の日本女性をリアルに演じていて素晴らしいです。そして美しいです。
この映画に描かれた日本が、現在の日本につながっているわけですが、この日本列島改造の時代に何か多くのものが失われた、そんな風にも思いました。でも前向きに希望を抱かせるラストの倍賞さんの笑顔が象徴するものは、いつまでも失ってはいけない普遍的なものに感じました。
山田洋次監督が自作を語る20分程度の特典映像と予告篇が付いています。デジタルリマスター版です。
映画の中に入り込んで見ることができました
(2005-08-05)
一番強烈なのは大阪のシーン。みんな疲れ果てているのに、万博を外から見に行ったりして、本当にバカかと苛立ちを感じ、映画の中に入りきっている自分を発見した。こういう感覚は、洋画や最近の邦画では感じることができない。倍賞千恵子や笠智習の演技もすごい。土着のヒューマニズムを感じる。