理想と現実
(2008-03-24)
自分が生きた人生と、生きたかった人生は違う。
冒頭の列車の音が今この瞬間に続いている過去の人生を象徴的に響かせて始まる2人の男の出会いは、お互いに生きたかった人生を生きている男との出会いで、2人は人生を交換したいと望むようになる。
だけど、2人がそれぞれ今立って走っているレールは、自分の過去が作ったもので相手に丸投げしてしまうわけにもいかない。だから2人は自分の人生を全うする決意をする。けど、2人は同時に立ってしまった死の淵で、今の人生を歩みきることよりも大事な本当の望みが何なのかを実感する。そして列車が走っていく音が、2人が乗り換えた新しいレールの行く末を詩情をまとってほのめかす。
人生を鉄道に、出会いを駅に、新しい人生を乗り換えにたとえて詩情豊かに描いた傑作。ギターの繊細な音が2人の揺れる心を直接僕らの心に伝えてくれるのは見事としか言いようのない演出。パトリス・ルコントの懐の深さを垣間見れる作品。
鼓動が止まるとき思う相手は
(2007-12-10)
男が二人。
一人は金持ちの老紳士、もう一人はチンピラ。
二人はそれぞれどこか社会からずれており、であったとき、己が憧れているものを相手に見出し、惹かれあう。
極めて個人的な領域にある二人の関係は、とても静かで、どこか滑稽で哀しい。
魅かれ合う男と男
(2007-03-23)
死ぬ瞬間何を思うだろう。これまでの人生が走馬灯のように流れるのか、最愛のパートナーや子供達を想うのか。
この映画の二人はお互いにお互いを想う。二人は同じ時に命を終えるという運命にある二人。出会うべくして出会い、性格も境遇も正反対がゆえに魅かれ合う。
一度しか過ごせない人生だからこそ、もっと他の生き方があったんじゃないかと思うからこそ、この映画の二人の最期がこれまで考えたこともない新たな世界を見せてくれる。
アンドロギュノスは失われた半身を求めていた。普通それは男女(おとこおんな)が分かれた半身を求めていることを恋愛に喩えて引用されるが、男男(おとこおとこ)が半身を求めているのがこの映画であろう。肉体の交わり以上に濃密な精神の交歓をルコント監督は提示してくれた。
とめどないダンディズム。
(2006-12-08)
ストーリーは至ってシンプル。しかし、演出、シナリオ、役者、カメラワークが人生の男の一期一会を限りなく魅せてくれる。
全編に流れるギターや、どんよりとしたカラー。
近年にないヨーロッパ映画ならではの雰囲気がプンプンです。また、フランス語って渋いんです似合うんですこの映画には。
吹き替えよりも字幕でみるべし。
ゆったりとお酒をチビリとグラスを傾けながら見てもいいかも。
意味深なシーンが盛りだくさん!
(2006-05-14)
これは素晴らしい作品でした。
銀行強盗を目論んで街を訪れた男は、病気の老教授の家にやっかいになります。
男は教授の安定した日常に憧れ、教授は男の人生に憧れを抱きます。
まず冒頭!
男が席から窓を見つめていますが、その表情がなんとも言えず、
「ぐぐっ」と引き込まれます。
印象的なシーンの多い映画ですが、特に印象深いのは下記3つでした。
拳銃を練習している男の傍に教授がたたずみ、
教授は拳銃を手にします。
その時の教授の視線をカメラワーク絶妙に追ってます!意味深。
男が教授の家のピアノを弾きます。
(ものすごい下手くそ)
その時の男の幸せを手に入れたような表情。
うーん。正直キます、このシーンは。
多分、色々取りざたされているであろうラストシ
ーン。
サイレントで延々と続くかに思われる男と教授の流れ。
二人の目線・投げられた鍵・落ちてしまう鍵・交差点・曲がり角・・・
色々気になるものを散りばめられて物語は幕を引きます。
いい映画でした。僕はこういうの大好きです。
(「はっきりしない」って人もいると思うけど)
素晴らしい一作です!