パゾリーニによる日本人論
(2008-04-24)
「神を喪失した人間の崩壊」という解釈で見ているのですが、
聖性を獲得した女中以外、四人の家族それぞれの末路がまるで現在の日本人
の属性そのものに見えてしまいます。パゾリーニによる、まるで予言のような
日本人論ではあるまいかと。テッド・カースンの冷たいジャズ、実際に飲み友
達だったというモリスンのそれと酷似しているテレンス・スタンプの眼差しなど
ストーリー以外にも聴き所、見所が少なくない名作のひとつだと思います。
無機質の世界
(2008-03-04)
ピエルパオロパゾリーニにとっては、テレンススタンプの存在は不思議なものではないだろう。一体何処から来て、何をして何処へ行くのか?宗教と言う世界を全く否定した作品。彼は悪魔なのか?実相寺昭雄「無常」の田村亮と共に、人間が産んだ人間と言うものを、非常に冷たい目で見ている。傑作といいたいが、なんとも言えない余韻を残す映画だ。
何かが去っていった
(2008-02-10)
残されたのは「喪失感」なんて言葉すら、ロマンティックに感じさせる虚無でした。
現れて去っていったものがなんだったのか、重い問いだけが残ります。
これぞ欧州、これぞイタリア映画、難解過ぎずに芸術が味わえます。
オシャレで高級感もあるが、驚くほど下品なシーンもある挑発的傑作
(2007-05-08)
デジタル・ニューマスター版の「テオレマ」は、画質が柔らかだ。作品の制作年代を考えればキレイな映像だが、鋭さがあるとも言いがたい。まるで、シワのついた紙にラミネート加工を施して、シワを見えなくしたようだとでも言おうか、全体的に、画面からノイズが除去されたというよりも、ノイズ自体がぼかされて目立たなくされたという印象のほうが強い画質である。ただし、色彩は鮮やかだし、輪郭もボケていないので、とりあえずはストレスを感じずに鑑賞できるDVDだと言えそうである。
この作品は、パゾリーニ監督の最高作と評されることもある作品だが、個人的な感想としては、映像の撮り方・つなぎ方に強烈な個性が感じられる作品でもあった。少なくとも、監督がこの作品を撮る際に、ハリウッド黄金期のアメリカ映画のような、洗練された作りを目指していたとは思えなかった。誤解を恐れずに言えば、ごつごつした仕上がりだとすら思われた。しかし、その作風は、意図的に選択されたものかは分からないが、人間や社会の隠された本性を白日のもとに曝け出すような、奇麗事ではない映画を撮りたいという、監督に姿勢にふさわしいものだと思われた。
エンニオ・モリコーネの手による、60年代アコースティック・マイルス調の音楽もたいへん印象に残る。オシャレで高級感もあるが、美青年の放尿シーンや中年男性の全裸もある、イタリア映画の傑作だ。
政治的、でもお洒落な映画
(2006-10-06)
パゾリーニの描く寓話的な映画は、軽妙でコミカルなものとドストエフスキーばりに重厚なものの2つに分けられると思うのですが、これは重厚な悲劇のようでもあり、映像がスタイリッシュであるせいか軽妙さも感じる、変わった作品だと思います。
あるブルジョワジーの一家の崩壊が冷徹な視線で描かれており、その視線の先を追うことで、当時の社会背景やパゾリーニの宗教観や政治思想が浮かび上がってきます。
堕天使の変化である青年を演じるテレンス・スタンプは悪魔的に美しく、シルヴァーナ・マンガーノも退廃的な有閑マダムの役にぴったりです。他にも『1900年』のラウラ・ベッティや後のゴダール作品のミューズ、アンヌ・ヴィアゼムスキーなど、配役も印象的。
映画の中で、若い男の子がキャンバスに向かって絵の具のドロッピングをやっていましたが、当時の美術の風潮や音楽などから、時代を感じて面白かったです。
意外と知られていませんが、音楽はモリコーネによるスコアです。
以前イタリアで見つけたオリジナルのポスターがとてもお洒落でした。