周防監督はこのころがいい
(2008-02-11)
1992年当時、日本映画は惨憺たる状況だった。黒澤明は巨匠になりすぎ、今では名前も思い出せないような、バブル後期にうつつを抜かした企業が大金をはたいた作品も多かった。それも思い切りムダに、である。TV俳優がTVの余興に映画出演していたこの時代、本当に日本映画はなくなるかと思っていた。そこに登場したのが周防正行である。坊主をコメディにしたトンデモ作でデビューしたが、まだキワモノ的見方も強かったこの監督は、2作目もその評判を加速させそうな「相撲」という題材を選んだ。これも大映だから成せる業であり、東宝・東映・松竹だったらGOサインさえ出なかっただろう。自分も全く期待せず見たのだが、ふたを開けたらびっくり、腰が抜けそうに面白かった。竹中直人の下痢ピー役はもはや伝説であるが、本木雅弘の凛々しさ、清水美砂のマドンナぶりも見事だった。小津映画のパロディは日活ロマンポルノ時代から続けていた周防映画の特徴であったが、本作でもバカバカしいくらいに踏襲している。これは小津作品を見ていないとわからないので、本作のすべてを笑い飛ばしたいと思ったら、まずは小津の主要作品を見ておくことを勧める。周防監督もいまや巨匠の域になってしまった。これからはこんなハジケ方をするのは不可能だろう。社会派監督だと思っている若い人にはぜひ見てほしい。1990年代を代表する傑作である。
こんな相撲部があればいいのに。
(2007-11-11)
廃部寸前の大学相撲部を存続させるため、相撲経験のない色々な学生が集められる。一人一人の部員のキャラクターが全く違っていて面白い。主人公の秋平(本木雅弘さん)はもちろんかっこ良いけれども、それ以外にも、体格は良いけど気の小さい学生、虚弱体質学生、妙に理屈っぽい留学生などが脇役として良い味を出している。個人的には、上がり症の青木(竹中直人さん)の演技に随所で爆笑。
みんなで大会に向けて稽古に励む姿を観て、何かがむしゃらに打ち込めるものを持っている人がうらやましく思えました。見終わって爽快感の残る映画です。
必ず笑える!
(2007-11-04)
この作品は何度も見ましたが、その度に大笑いできる、コメディの傑作です。
単なる馬鹿笑いではなく、ホロリとくる、暖かい作品。
日本映画の中の傑作のひとつだと思います。
shall we dance? より私は断然こっち。
大学生,サークル,80年代の夢
(2007-02-18)
この映画は正確に言うと相撲の映画ではない。
この映画は,今や失われつつある,日本の「大
学生」を活写した作品と言えるだろう。
日本ではある時期まで,大学生でいることに
ある種の独特な位置づけがあり,大学での生活
は自由で気楽で,なんでも有りの楽しい生活が
保証される場として成立していた。この世界は,
やりたいことのために何年も留年したり,授業
に全く出席しないまま単位をとることを許され
るような,欧米とも全く異なる,非常に母性的
な世界であった。
80年代後期から90年代前半は,学問(特に文
系)に対するロマンティシズムもまだ存在して
おり,一方で経済的な爛熟期に至る社会状況の
中で,大学のもつ幻想がある意味で頂点に達し
ていた時代であったと捉えられる。
当時のこの雰囲気を,この作品は非常にうま
くすくいあげ,上質なエンターテインメントに
仕上げている点で,出色の出来。
それにつけても,今や大学という「生き物」
は残念ながら瀕死の状態にあるようだ。
周防監督作品の弱者に対する愛情と着眼のすばらしさ
(2006-05-09)
周防監督の作品は、粋なユーモアセンス(たいていは、どたばた下品な笑いになる)と何よりも、コンプレックスを持った人間に対する愛情を描くのが、巧みだ。
題材も、超マイナーな、大学相撲に着眼した点は見事でそれがきちんと商業的に成功しているところがすばらしい!!自己満足の実験的映画でなく、映画は娯楽しかし、テーマの主張もしっかりしている。脚本、配役見事、特に相撲部の監督役の柄本明さんの少しさめた、抑えた演技がよい!!リメークされたシャルウィーダンスもよい映画だが・・・・。10年以上前の作品だが古臭さを感じない。
殺伐とした今ぜひ見てほしい映画のひとつ、けして派手なアクションもCGもないが、笑えて少しホロリとさせられる作品です。