止まらない涙
(2008-07-06)
はじめマスコミの記事に追い込まれる有名人の苦労と不安を想像したりして見ていたが、途中から涙が止まらなくなった。悪のワナに見事にはまっていく弁護士役の志村喬の演技に圧倒された。主演の山口淑子と三船敏郎は他の出演作と異なる魅力を発揮する。今は亡き助演者たちの巧みさも印象に残り、年の瀬のシーンで全員が歌う「蛍の光」の合唱が胸を打つ。ラストの痛快さはやはり黒沢ならではと思わされた。
志村喬が演じる、清濁併せ持つ人間の実像
(2004-08-14)
体裁は現在でいうところの法廷ミステリーですが、そこは黒澤映画、原告弁護士役の志村喬の娘が結核ながら星のような綺麗な心を持っているとか、志村喬そのものも「ウジ虫で人間の屑」という弱さを持っているなど、人間の在り方がテーマです。
ちょうど『酔いどれ天使』と三船・志村の立場が逆といえるかもしれません。
中盤に、クリスマスのバーで「今年はダメだったが、来年は頑張る」とみんなで蛍の光を歌う場面は、名シーンです。『生きる』のブランコとは対極ですが。
とにかく黒澤作品だし、最後までハッピーエンドかバッドエンドか分からないところがいいです。
冤罪・裁判を通した人間ドラマとしてとっかかりを作ればいちばん素直に楽しめるのではないでしょうか。
志村喬に代表される、単純には割り切れない人物描写は、単純な現在の映画構成にはない魅力にあふれています。
「醜聞」の三船敏郎
(2002-12-03)
「醜聞」を私は何回観ただろう。
「用心棒」あたりの苦みばしった感じも非常にいいが、若き日の三船敏郎が本当にいい。
この作品を観ると「これは三船敏郎そのものではないのか?」と思わされること度々である。
少々荒っぽいが真っ正直で、間違ったことを見逃すことができない主人公の青江。この快男児の男っぽさもさることながら、私が特に心惹かれるのはその「やさしさ」である。
病気で寝たきりの少女・正子(桂木洋子)を励ますために、声楽家・西条美也子(山口淑子)が唄う「きよしこの夜」にオルガンで伴奏をする青江の姿は、何度みてもじんわりと涙が溢れてくる。こんな「美しい」男を私は他に知らない。心が「美しい」のである。
そう、「きよしこの夜」を聴きながら、本当に幸せそうな!正!!子の側に置かれているクマのぬいぐるみ、そのおでこには星をかたどった飾りが貼られているけれど、あれは三船自身が本当に貼ったものだと、そう思えてならない。
現在「カッコイイ」と言われている俳優のなんてつまらないこと。三船敏郎のような俳優は二度と出てこないとよく言われるけれど、私も本当にそうだと思う。