ちょっとひょうきんな健さんに会える。静かな興奮と感動の大傑作!
(2008-01-29)
人の感情とは不思議なもので、イヤな思い出しかない、二度と戻りたくない場所のことが、無性に懐かしく思い出されることがあったりする。このシリーズの主人公・橘真一にとっての網走刑務所は、“寅さん”にとっての所謂「とらや」とは違うが、そこは彼にとっても、そして観客である我々にとっても、どこか懐かしい場所なのだ。
傷害の罪で網走に送られた橘は、時に理不尽な仕打ちを受けつつも、なんとか刑期を全うしようとする。独房に入れられた橘の脳裏に浮かぶのは、貧しい過去と母の姿だった。しかし、もうあとわずかで出所という時に、同じ房の連中の脱獄計画に巻き込まれてしまい……。
1965(昭和40)年4月公開。「本当はカラーで撮りたかった」(石井監督)そうだが、モノクロームのシャープな映像―第2作『続』からはカラー。『続』といっても、物語上の連続性はない―が、北国の寒々とした冷気をリアルに伝えてくる。『ならず者』『いれずみ突撃隊』などで試行錯誤を重ねてきた石井・高倉コンビの才気と人気が一気に爆発。この一作で健さんは、東映のスターから日本映画を代表するスターにのしあがった。このシリーズでの健さんのちょっとひょうきんな仕草・表情は、他ではあまり見られないものである。
とはいえここでの健さんは、押し出しの強さに関してはまだまだ。ダンディーな丹波哲郎、絵に描いたような怪演をみせる南原宏治ら、助演陣―ほぼ皆勤賞の由利徹は第2作から登場―に譲る部分もある。しかし助演陣といえば、なんといってもアラカンさん。彼をめぐる中盤の展開は、映画史上に残る驚きをもって迎えられるものだろう。
映像特典として、予告編とフォトギャラリーを収録。
八木正生による音楽もすばらしい。
最後に。
2005年、この世を去った石井監督はいま、網走の地に眠っている。
そしてその、墓碑の碑文をしたためたのは、健さんその人だ。
娯楽作品!
(2007-05-21)
題名は 子供の頃から 知っていましたが なぜか手が出ませんでした。邦画に期待してなかったからです。 モノクロ作品のせいか やけにリアルでした。トロッコでの逃走シーンは 見応えがあります。面白くなりはじめたころ 結末を迎えてしまいます。残念。
まずご覧なさい
(2006-03-24)
度肝を抜く展開とはこのことか。冒頭の暗く悲惨なイメージがいつ
の間にか活劇ドラマに仕上がっていく。脱獄サスペンスあり、手錠
のままの男二人の逃避行あり、トロッコの活劇ありでとにかくこれ
でもかこれでもかと面白いシーンをぶん投げてくる。紛れもなく
あの石井輝男監督の作品だ。アラカン(嵐寛十郎)の豹変ぶりやセリ
フの言い回し、安部徹の悪役ぶりも楽しめる(この二人は第二作
以後にも登場してくる)。お色気のない第一作だが、第二作以後、
三原葉子なども出てきてなりふりかまわぬ怪演技・怪演出の続出。
娯楽映画とはこれだと確信させてくれた。10年後に作られた同じ
東映の「仁義なき戦い」などと比べてみても「時代」の変化が読め
る。いずれも今日は作られることがない映画だが、今見てこそ本当に
面白いと唸らせてくれる。
石井監督の偉業の始まり
(2005-03-13)
60年代の日本映画を沸かせた代表作。地道なロケハンで見つけた取って置きの場所で最後を締めくくったトロッコシーンはまさに偉業!
10年以上前に直接お話を伺う機会があった。監督の撮影は実に凝っていますね、あれだけお客を楽しませてくれて、最近のお仕事は?「みんなステーキばかり食べたがるから、そういう質問になる。僕はコロッケで充分なの!」映画の本当の楽しみを知り尽くした監督だからこのシリーズが人気を博しえた。名作である。
健さんなら、これ!
(2004-02-13)
健さんに会いたいと思ったときに、真っ先に思い浮かぶ映画です。寡黙で、侠気があって、誠実で、やさしく、いつも損をしている。それが、映画であるということは分かっていても、健さんに何度も救われた人は多いと思います。日本人の姿をそこに見ているように思えます。共演の丹波哲郎や田中邦衛が何とも言えずいいし、嵐勘十郎の貫禄が見事。有名な、手錠を鉄道で切るシーンは、日本の映画史上で最も有名なシーンだと思います。まだ見ていない健さんのファンの方は是非ご覧になってください。一段と惚れ直すと思います。