言葉の重さと沈黙の重さ
(2006-06-05)
一つ一つのシーンが心に重く残る映画だった。忘れられない映画の一つとなるだろう。奴隷船アミスタッド号での抵抗となる暴動を犯罪とするのかどうかを争う裁判を描いた作品だ。
アンソニーホプキンス演ずる元大統領が、弁護は「いい物語がえがけるかどうかだ」ということばを発する。まさにその言葉通り、暴動のリーダーシンケが語る物語は、聴く者のこころに語りかける。朴訥だが威厳のある言葉。権力や力ではなく「威厳」。それを聴くアンソニーホプキンスは、それまでの饒舌とも思える台詞を失いシンケを見つめる。沈黙で深く心で受け止める。この場面が、私は忘れられない。
人間とは何か
(2005-11-11)
脚本、監督、出演者、配役、どれをとってもはまっています。特に奴隷のリーダー役を演じているJ・ハンスーは、もとホームレスという全く無名の黒人俳優。彼の演技が一番の見所といっても言いすぎではない。俳優ではないがエキストラでもない「奴隷役」たちをも絶賛したい。
アメリカの奴隷制度を題材に多くの作品が世に出ている。これはその中でも一目置くべき作品だと思う。実話に元ずくしっかりしたストーリーであり、この事件以後起こる南北戦争につながる出来事として説得力がある。
ただ奴隷として出演した彼らの演技が、あまりに真に迫ってくるため、観ていてつらくなるのも確か。史実として目をそらさずに見据えよう。
メイキングではスピルバーグ監督を含めて主な俳優陣がこの作品を語っている。これは見逃せない「作品の一部」と言える。スピルバーグ監督が「人間とは何か」がテーマだったと語っていたのが印象に残る。
アメリカの正義。人の尊厳。今でも同じ。
(2002-08-16)
「人買い」がある国々の間で黙認されてきた時代。「アミスタッド」という奴隷運搬船が米国海域で保護された。この船に積載された褐色の肌の人々の処遇を巡って、事はスペイン女王、英国海軍、米国大統領を巻き込む大事となる。故国から不当に拉致され、自由を得る為にアフリカ人が、若きアメリカ人と共に法廷に臨むという、所謂アメリカ映画らしい、自由の尊重と不屈の精神の象徴のようなストーリーだが、米国の奴隷解放のきっかけとなった史実でもある。
ややもすれば、暗く、退屈になるかもしれないモチーフを、個性的なキャスティングと、テンポのよい展開によって作品の中に引き込まれてしまい、流石にスピルバーグ監督の手によるものだと感心した。
政治力にねじ伏せられ、無残な敗北を噛みしめる!彼らに、初めは冷やかな傍観者であった元大統領(アンソニー・ホプキンスが、素晴らしい演技をここでも披露している)が遂に立ち上がり、法廷での辛辣を極めた彼の言葉は、我々が生きる現代にも痛烈な風刺として胸に突き刺さる。
「スペイン女王は、スペインのような司法制度をわが国に望んでおられる。そう、11歳の女の子がおもちゃにできる司法だ。」
立場によって「正義」の顔も変わってきたのが歴史。そして自分はどの顔を持つのかを、自問するきっかけになった作品だった。