コンパクトにまとまって原作より楽しいかも
(2007-05-15)
ケネスブラナーが「恋の骨折り損」をミュージカルに仕立てた快作。
だいぶ前に購入して積んでおいたのだけれど、蜷川芝居を見に行くので予習として見ることにした。
ミュージカル部分の演出はハリウッドミュージカル黄金期のそれを踏襲していて『ザッツ・エンタテインメント』で見たことの有るような「画」を見てにやっとしちゃうみたいな、ミュージカル好きにとっては美味しい作品に仕上がっていた。
ミュージカルは必然的にセリフの数が入らないものだが、この作品の時間は 93分。蜷川演出版が約3時間かかることを考えると、大幅にカットが入っているのは明らかだが、特典にはカット・シーンがいくつも収録されていて、そもそも戯曲にはあるものなので必見。
正統派ミュージカル映画!
(2005-09-07)
ブラナー卿はいまどきシェークスピア映画を作るという奇特な?おひとですが、何気に本作が最高傑作?と思える出来です。
成功の秘訣は、時代設定を1930年代頃に設定し、原作は香り程度にとどめ、MGMやRKOのミュージカルへのオマージュという手法にしたこと。
全編セット撮影で正統派ミュージカルへの忠実さは、かの「ムーラン・ルージュ」も「シカゴ」も足元におよばないくらい。
ポーター、バーリン、ガーシュウィンのあの曲この曲…アステア&ロジャース・スタイルからバークレーの水中バレエまで盛りだくさんの演出。ブラナー卿ってばよほどのミュージカル通?
舞台ファンには「プロデューサーズ」で怪演のネイサン・レインが
「ショウほど素敵な商売はない」を歌う場面でおつりが来ちゃいます!
クラシックミュージカルファンで最近なかなかいい作品がないとお嘆きの貴兄!愛と尊敬に満ちた伏兵を見逃さないで!!!!
love makes you blind
(2003-06-05)
ナヴァールの若き国王は、世界が戦争に忙しいときに、
3人の学友とともに3年間学業に専念するという公約を立てた。
その内容とは、週に1日は食べ物に触れてはならない、その他の日は
1日1食。3時間しか眠らなぬこと、そして決して女性と会わないこと。
わずかでも規則を破った者は永遠の恥辱に耐え忍ばなくてはならない。
あるとき、フランスの王女がナヴァール国王を訪ねてくるという。
公約に従って宮廷内は“女人禁制”。王女とそのお付きの美女4人は、
野外のテントに泊まることに。ところが、厳しい誓約書に署名した
国王とその学友たちは、そろいもそろって一晩で恋に・・・?!
現代風にアレンジされたクラシック・ミュージカル映画。
恋する男ってバカだな~と思いつつ、微笑ましく好感が持てる。
こんなにも無邪気に描かれたラブ・ストーリーは他にない。
私は好きです。
(2003-02-12)
かなり良く出来てる。
ミュージカル部分がちょっと厳しいが見せ方が上手いので気にならない。
脚本と演出、演技は流石シェイクスピアマニアブラナー、ほぼ完璧なのでその点は安心。シェイクスピアやミュージカル映画が好きな人は是非と言う感じ。私は好きですので評価します。こういう映画。
よって★五つ
恋は人を馬鹿にする~そして男に下手な歌を歌わせる
(2002-06-01)
「雨に唄えば」でジーン・ケリーは雨の中で歌い踊り、「恋愛準決勝戦」でフレッド・アステアは天井を歩いた。
このように恋をするとかくも人は馬鹿になるのである。
このお話はそんな恋をして馬鹿になった男たちの物語なのである。
頃は第二次世界大戦前。
世の中のすべてが戦争ムードなのに嫌気がさした若きナヴァール王とその学友たちは、そんな世の中への痛烈な批判を込めて、3年間、学業に専念することを宣言する。そしてその間はもちろん女人禁制。恋などもってのほかである。
ところが王もその時はすっかり忘れていたのだが、フランス王女が病床の国王に代わって領地やその他もろもろの問題を交渉しに、このナヴァールへやって来るのである。もちろん3人の美人な侍女をお付きに従えて。
たちまち恋に落ちる王たち4人の男性。
恋愛は御法度のはずなのに、一体どうなるの!?
原作はウィットに富んだ言葉遊びや人物関係の面白さに主眼がおかれた喜劇である。ただし起伏の無いストーリのため、その言葉遊びがだらだらと続いているような感じがし、シェイクスピアの作品中最も不人気の作品である。
ケネスはそういった原作のだらだらした場面をばっさりと切り捨て、代わりにアーヴィング・バーリンやガーシュウィンなどのヒット・ソングをふんだんに入れ、全体をミュージカル調に仕上げた。
しかし作中で歌い踊る俳優のそのほとんどがミュージカル未経験者のため、歌と踊りはお世辞にも上手いとは言えない代物である。
だがこの作品の全体を通しての構成は、ミュージカルの楽しさ、原作の面白さを損ねることなく作られていると思う。いや、むしろこの難解で退屈な喜劇の良さを十分活かしきった上で、誰にでも楽しめる作品へと生まれ変わっていると言っていい。
例えば原本での言葉と歌の出だしがぴったりとあった「チーク・トゥ・チーク」の場面。
次々と人が同じ場所にやってきて自分の胸の内を独白するという、現実では非常に無理のある場面をミュージカルを使うことによって上手く処理した「君にくびったけ」の場面。
弱いものいじめというかこの時代の劇のいやらしさを満載した場面をさらりと受け流し、代わってショウ・ビジネス賛歌の歌に置き換えた「ショウほど素敵な商売は無い」の場面。
別れのシーンである「誰にも奪えぬこの思い」の場面は歌とシェイクスピア、どちらものオリジナルを越えて秀逸の場面であると私見ながら考えている。
それでいてシェイクスピアの主張する言葉をしっかりと自分のものにし、古びた説法ではない新たなメッセージとして私たちに訴えかけてくる手法は、お見事と舌を巻かざるを得ない。
何よりも、恋をした男とはここまで馬鹿になれるのかという4人の男たちの馬鹿さ加減がたまらない。
恋をしたら雨の中で歌い踊り天井を歩くように、彼らはど下手な歌と踊りを披露するのである。その下手さ加減がまた彼らの馬鹿さ加減を強調して笑いを誘われる。
キャストもこれ以上の人物は考えられないというぐらいぴったりの人ばかりだ。アリシア・シルヴァーストーンの小悪魔な王女は私のお気に入りである。
そしてただ馬鹿騒ぎするだけでなくちょっとほろ苦い最後もまた良い。時代を16世紀から第二次大戦前にもってきている設定がこんなところでいかされるなんて。
これは全ての恋人たちに捧げる、最高にハッピーなラブ・ストーリーである。