ギター・フリークにはドキッとするほど魅力的
(2008-03-23)
映画は1999年12月3日リリース。ショーン・ペンが天才ギタリストを主演。ペン演じるエメット・レイ(実際はこの人物は実在しないが、なんとなく僕はタル・ファーロウを思い浮かべてしまった)の生き様を古めかしい映画の何ともいい雰囲気を出しながら描いている。
彼が神とあがめるギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの絶頂期は1949年頃だ。実際は手が火傷で不自由だったにもかかわらず驚くようなプレイを残している。ステファン・グラッペリとの1949年ローマ録音の『マイナー・スイング』などは、ジョニー・デップが、ドブロ・ギターを『ショコラ』の中で披露してくれているのでご存じの方もいるだろう。この映画でも彼のフレーズを模したジプシーっぽいギターがたくさん出てきて、ギター・フリークにはドキッとするほど魅力的だ。
僕には口をきけない少女を演じたサマンサ・モートンの演技が心に残った。彼女は2003年公開の『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』でアカデミー主演女優賞にノミネートされている。エメット・レイが彼女の大切さに気がついた時、やっとそれが『恋』だったのが分かる。自信家の男には結局『恋』の何たるかも見えない。ウディ・アレンはそう言いたいのかもしれない。
わかってるけどわからない
(2007-07-18)
ウッディアレンがいつものようにダメ人間の中年男を撮っててさ、そいつはいい年して身勝手でガキで馬鹿なの。
でもギターの腕前だけは凄くてさ、そこにすべてをぶつけてるわけよ。だから他のものなんかいらないと思ってるんだ。
でもやっぱりそれはでっかい勘違いで、必要なものは必ずしもひとつじゃないんだよね。本人もそれはうっすらずっとわかってるの。
でも身勝手でガキで馬鹿だから、そういうことには目をそらしてるんだ。
いつかは苦笑いや、『Take it easy』なんかじゃ済ませないような、大きな出来事が起こっちゃうのに。悲しいやらくやしいやら情けないやら、思ってる暇もないくらい、大きな出来事が起こっちゃうのに。
ほら、よくいうじゃん、『大切なものは、すぐそばにあるんだよ』っていうやつ。書いてみるとすっげえ陳腐な言葉だね。
まあでもまったくその通りでさ、それが掌からなくなっちゃうまで気付かないのも、やっぱりまったくその通りなんだよね。あたりまえのことなんだよ。言葉で考えるのは簡単だね。
なんだろ、完璧にダメなんだよ、この映画。『ダメなんだろうなあ』とうっすら悲しく、笑いながら観て、『ああ、ダメだなあ』と思うんだ。やっぱりわかっててもダメ(おれはこういうのを哀愁っていうんだと思う)なのは悲しくなるんだ。
そういう映画だったよ。いい映画だった。
ダメ男の可愛らしさ。
(2006-08-24)
ウディ・アレンらしい、軽妙でいて、かつしっとりと魅せてくれる映画です。
天才ギタリストだけど、幼稚でダメダメ男の典型を演じるのが、ショーン・ペン。
ギター以外はいいとこなしの変人、ワガママだけど、
機関車好きだとか、やってることが何だか幼くて、憎めなくて、可愛げがあります。
人前でちょっと突っ張っちゃうところなど、ショーン・ペンはとても雰囲気があって、演技は自然、さすがです。
口の利けない純真な恋人役は、サマンサ・モートン。
はかなげな笑顔が可愛らしく、彼女の地味な良さを、ショーン・ペンがうま〜く引き立てています。
美人妻はユマ・サーマン。 とてもゴージャスで、これも適役でしょう。
BGMはもちろんジャズ、美しい曲ばかりで癒されます。
ドキュメンタリー仕立てにしてありますが、けしてドラマを邪魔することはありません。
フェリーニの「道」仕立てになっていますが、
ラストはほんのり苦く、しみじみと心に残ります。
何年経っても時々観たくなる映画
(2006-04-08)
ショーン・ペンをこの映画で知った。ファンになったが、やっぱりこの役の彼が一番好きだ。身勝手で、「女とは遊ぶが、女は必要じゃない」と言ってはばからない自称天才ギタリスト、エメット・レイの役。時代は1930年代、「世界一のギタリストはジャンゴ・ラインハルトで、二番目は自分だ」と豪語するが、確かに素晴らしい技巧と音色の持ち主だが、やることすべてはあまりに自己チュー・・・。そして、その彼の相手役が、口のきけないハッティ役のサマンサ・モートン。(彼女がまたキュートで、特にサンドイッチを食べてる姿がすごく可愛い!)
結局二人は別れる運命だったけど、いつ観てもなんか胸がキュンとする。どんなに自己チューかも知れないけれど、あんな素敵なギターを弾いてくれたら、私もエメット・レイのこと好きになっちゃうだろうな。・・・
私としては、もともとジャンゴ・ラインハルトが大好きで、それからこの映画にはまった感じもする。だから、このサントラもお勧めです!いつ聴いても映画を思い出し、二人のことを思い出し、口のきけない八ッティの笑顔を思い出し、自分も素敵な人生を歩みたいと思わせてくれる。
ウディ・アレンは奇才・異才と言われるが、私にとってはこんなに素晴らしい映画を贈ってくれたありがたい監督である。
いろんな意味ですごい
(2006-03-18)
ウディ・アレンの映画のDVDはなぜか値段が高い。 でも、「ギター弾きの恋」は5000円払っても損をしたとは思えない名画だ。(まあ、もう少し安くして欲しい気はするが・・・)
映画は、ウディお得意のドキュメンタリータッチで、伝説のギタリスト、エメット・レイの半生を描いている。
主役を演じるショーン・ペンが、エメットの変人ぶりに見事にハマッている。 素晴らしい演技だ。 ハッティ役のサマンサ・モートンも好演しているし、ユマ・サーマンも綺麗だ。
映像・音楽ともに、上質のセンスを感じさせるし、ウディ特有の笑いが散りばめられた脚本もさすがだ。
要するに、わたしが観たかった映画を、ウディ・アレンは撮ってくれた。 だから、私的には満点の映画だ。
しかし、この映画、いろんな意味ですごい。
映画そのものが、フェリー二の「道」へのオマージュみたいになっているし、ジャズにそれほど詳しくない人が観るとコロリとだまされる。 映画を観終えた後も、だまされていた事に気がつかない程だ。
実際、わたしはこの映画を観た後、エメット・レイのアルバムを購入しようと、ネットで検索した。 当然、見つかるはずもなく・・・まあ、恥ずかしい話です。
でも、代わりに買ったジャンゴ・ラインハルトのアルバムは、今でもお気に入りの1枚です。