はじめての『上京』『就職』『挫折』
(2008-08-08)
この作品には原作童話がありますが、…宮崎氏は、誰しもが、子供から大人へ『自立』する通過儀礼とも言えるべき『自立』『とまどい』『挫折』『葛藤』を【等身大の女性の観点】で表現した作品であり、寓話的な世界観でありながら、実はかなり現実的な展開をする『上京物語』…なので、10代の視聴者にはまだピンと来ない方も、まま、見受けられるようだ。
【…女性の観点】と表記したが、『子供を世に送り出すお母さん』『これから母親になるオソノさん』『仕事に対して自分が確立されて来たウルスラ(画家)』の女性達が『これから自立を始めるキキ』の物語(人生に)に交錯させていくのが実に感慨深い。
そして【現実の等身大の女性観】を歌い込んできたユーミン(荒井由美の時代)がメインテーマに選ばれた。
映画公開時、『女性の社会進出』が声高にクローズアップされていた時の作品。
「しきたり」
(2008-06-29)
映画冒頭でコキリ母さんが言う。
「エエ 古い しきたりなんです」「魔女は13歳になったら家を出るっていう」
「でもあの年でひとり立ちなんて 今の世にあいませんわ」
この作品の冒頭で、キキが旅立つ理由は「しきたり」である。
「今の世にあいませんわ」とは言うものの、コキリ母さんとオキノ父さんはキキを
「信頼して」旅立たせるのだ。
この「しきたり」と言う言葉を昨今、聞くとしたら冠婚葬祭の時ぐらいになった。
ここでの「しきたり」とは催事の「作法」を指すのではなく「動機付け」である。
ひとり立ちの為の「動機付け」なのである。
魔女の家系に生まれたキキは、この「しきたり」を受け入れる運命にある。
確かに、現代でいう「自由」は無いのかもしれない。
しかし「自由」を掲げ、個性も自由に伸ばすことが最良である、
自分の好きな職業に自由に就くことが最良だ、
自由に思うがままに生きることが幸せだ、
と言われて逆に「自由」に苦しめられる子供もいるはずである。
現に、私はそうであった。
ある程度の「運命」を提示することも、子供にとっては選択肢が絞れて混乱しなくて良いのかもしれない。とも思える。
「わたし修行中の身なんです…魔法がなくなったら…
わたし…なんのとり得もなくなっちゃう…」
この一連のシーンは懸命に自分の存在意義を取り戻そうとするキキの必死さが胸に迫ってくる。
なぜ、キキがあれほどまでに必死になるのか。
それは「魔女の子」という「運命」のもとに生まれてきたからだろう。
もしあそこで「運命」などなく、他にも「自由な選択肢」があったら
キキがあそこまで必死になっていたかは分からない。
しかし「運命」という逃げ場のない場所があるからこそ、
なんとか諦めることなく「魔法を取り戻せた」とも言える。のではないか。
それこそがキキにとっての「しきたり」から始まった「ひとり立ち」への過程であった。
制約という名の「しきたり」が子供の生命力を引き出すのに最良の手段であることを
古来の人々は知っていたのかもしれない。
あとは自分の子供を信頼して、現代社会に向かって
「あんたなら大丈夫だよ!!」と送り出せる親がいればいいのではないか。
そしてオキノ父さんのように
「うまくいかなかったら 帰って来ていいんだよ」と、言えればよい。
久しぶりに見たけどいいです
(2008-05-24)
子供の頃見たままで内容をよく覚えていませんでしたが、
逆にそのぶん楽しめました。
仕事で色々なことを経験してキキが成長していく姿、大人になると身に染みてよくわかります。
昔見たけどあまり覚えていないなあ、という人がいたら是非。
それにしてもやはり音楽が秀逸です。久石譲氏のセンスがキラリと光っています。
ルージュの伝言大好きです。
絵描きさんが書いていたのはシャガールかな?
キキのスケッチも「横顔」で描いていたのや、
カラスのデッサンもしっかり絵に活きているのが、細かい所ながらも納得。
そして協賛に「ヤマ○運輸」。
クロネコヤ○トの宅急便ですね。一歩前へ!
案外、主役はジジかも…って思うことがあります
(2008-05-18)
ジブリの作品で「となりのトトロ」は私にとって別格です、子どもの頃の思い出がじわーんとあふれそうで。
トトロ以外では「魔女の宅急便」がいちばん好きです。
よ〜し、明日っからもガンバルゾ〜! と元気が湧いてきます。
キキもおソノさんもいきいきと描かれて、見ているだけで力づけられますが、私がいつも注意深く見ているのが
ジジの表情や動作です。
ジジあってのキキだなと思う場面も多いです。
ジジは言葉を失ってしまったようですが、キキとのステキなつながりは変わらないのだなと、エンディングを
見てほっとします。ジジの声はバタコさんの佐久間レイさん、いいなあ。
宮崎アニメではこれがベスト
(2008-04-30)
この作品は、「ラピュタ」の様な劇的な展開は無いが、「総合点」では宮崎アニメではベストだと思う。というのは、「主人公が魔女」というファンタジー的要素と、20世紀前半から半ばの西欧・北欧的世界観を、違和感無く融合した点、また、主人公をはじめ、登場人物の心理描写に見事な点があるからだ。私には「進学校を心身の疲労で中退し、無名の高校でゼロからやり直した」という挫折経験がある。よって、「ナウシカ」のナウシカの様な「スーパーヒーロー・ヒロイン」が主人公の作品には全く共感出来ない。一方、この作品は、主人公キキの様に、経済的自立はともかく、新たな環境での戸惑いや、自分が持つ少ない能力が駄目になった時の焦燥感、更に、ライバルが出現?した時の自分の存在意義への疑問など、身近な内容が多く、非常に共感出来るので、私は良いと思った。宮崎アニメは、「良い子向けの理想論」とか、「美少女・老婆・飛行機が必ず登場するオタク向けアニメ」等と言われる事もあり、私も、そう感じる時もあった。だが、それは偏見だと、大人になってから改めてこの作品を観て思った。観終わって何かが「魔法の様に」変わる訳ではないが、清々しい秀作だ。