せつなさの残るジュブナイル小説
(2008-03-05)
クライマックスシーンを読みながら、やはりこの作品は、
通過儀礼を描いたジュブナイル小説なのだと思った。
とくに、ユニオンの塔から帰還するくだりは圧巻で、感動
すら覚える。
映画では語られなかった後日談もしっかり書かれているが、
せつなさとともに虚しさが残り、その意味では映画の終わり
方のほうがいいかなと思う。
小説としてのあらを探せばいろいろあるが、素直な気持ち
で読めば、心の奥底にあるものが揺り動かされるような感動
を味わえる佳作だと思う。
まず映画を見てから、小説を読むことをお勧めしたい。
「独り」から始まり「独り」で終わる物語
(2008-01-26)
映画を観ただけでは物語として消化不良だったところ
映画のその後が少し書かれている、とか
浩紀の東京での高校生活が書かれている、とか
そのような情報をあったのでこの本を買いました。
映画を見終わった時点で
「これは村上春樹の『ノルウェーの森』なんだ」
という感想を持ってしまった自分には特に
暗い高校生活を送る(表向きはうまくやるのだが)
浩紀とその生活に関わる「水野理佳」とい宇登場人物は
本当に『ノルウェーの森』のワタナベとミドリそのままだった。
それでも映画を観て物語の把握がしやすかったし面白かったので、
400ページ弱のこの本を5時間ぐらいで一気に読み切りました。
つまらなければそんなことできないわけなので
やっぱり面白かった、ってことだと思います。
読む価値あり
(2007-10-20)
まあ小説としての出来は多少甘いものもあったかも知れませんが、
この作品自体に大分ほれ込んでいる僕としてはかなり面白かったです。
原作では描かれていない拓也と浩紀、そしてサユリとの出会いや、
飛行機作りの理由、物語のその後など「雲のむこう」という作品がこれで
補完された感じです。
村上春樹の小説が好きな方なら楽しめるんじゃないでしょうか?
原作のアニメを見ていない方はまずそちらから入ることをお勧めします。
DVDの方が好きです
(2006-10-07)
本編(映像作品)と比べると、リアルというか生々しいというか…本編では描かれていなかったところも、細かく書かれていて、面白い部分もありますが、新海さんの作品の純粋さが壊れちゃってる気もしました。 主人公も少しキャラ違う。。
《家族》のいない世界
(2006-09-26)
原作のアニメ映画は、絵がとても美しく音楽も良い、印象に残る作品だった。しかしやはり時間の制約があるので、ストーリーが説明不足になってしまった。本書は、その不足を補うために書かれたのだろう。実際、同時にサユリを好きになったヒロキとタクヤの複雑な関係、そしてサユリが失踪した後の喪失感、それから三年間の息苦しさなどの、映画では省略された影の部分が読めたのは良かった。
だが、当然のことに、あのすばらしい映像と音楽なしでは感動には至らない。また、映画のノベライズなのでセリフが多くなるのは仕方ないが、小説としては段落が短いし、文章が稚拙に感じられる。これが31歳になった主人公の手記という設定ならば、もっと大人らしく書いて欲しい。
それから最大の不満な点は、映画では三人の主人公の親も家族も全く出て来なかったのが、小説では当然登場させると思っていたら、サユリの母が少し出て来ただけだったことだ(しかも薄情な親として)。これは作者の世界観の重大な欠陥ではないだろうか。誰にも必ず両親がいるのであり、親や家族の存在を無視してはならない。アニメやライトノベルがサブカルチャーから抜け出せないのは、そういう現実感のなさに一因があるのではないか。