単純さの奥の深遠な音の宇宙
(2008-03-04)
内田光子は、ロンドンでモーツァルトのソナタ全曲を演奏するコンサートを開くことにより名声を確立し、さらにはピアノソナタ全集もリリースしています。しかしこのディスクは、1991年のモーツァルト・イヤーに日本で行われたリサイタルを収録しています。
全集の演奏ももちろんすばらしいものなのですが、ここでの演奏はそれ以上のものです。ほんとうにごくまれなことですが、音楽の神さまがおりてきているような感覚を味わえるコンサートに出会うことがあります。このリサイタルもそうだったのではないでしょうか。
リストのような高度な技巧を要求される曲と比べて、モーツァルトの曲はシンプルです。でも、逆に、そこに奥深い音の宇宙を構築することは、簡単ではありません。そうした領域に到達することのほうが、派手で技巧的に難易度の高い曲を弾きこなすよりもずっと困難なことなのです。そして、このリサイタルの演奏は、そこに到達しています。
特筆すべきことは、録音もきわめて優秀なことです。ピアノの音も分離よく明瞭にとらえられていますし、よい装置で聴くと、客席のノイズを含んだ空気が、演奏とともに緊張感みなぎるものに変わっていくのがわかります。
素晴らしいピアノの響きで歌い上げられるモーツァルト
(2007-05-20)
内田光子をはじめて聞いた。モーツァルトなんてドソミソで予定調和で退屈だと思っていたこれまでの考えを覆された。こんなに自由に歌い上げられるものだったとは…。クラシックは作曲家と演奏者のコラボレーションであることを改めて認識させられる。
噂に違わぬ優秀録音だが、それ以上に元のピアノの音そのものが耳を疑うほど素晴らしい。金属的な振動音はまるでなく、透明で澄み切っていながらみずみずしく木質を感じさせる響き。こう書くと支離滅裂な表現だが、これは聞かないとわからない。一体どういう調律をすればこんな音が出るのか…。
素晴らしすぎる1枚。愛聴盤になりました。
ライヴ盤の内田光子
(2006-12-16)
モーツァルト・イヤーのベストディスクだ。これは再発売だろう。
ディスク・オブ・ザ・イヤーかと期待したベートーヴェンが期待外れだっただけに、私見ではどうした内田の感が強かったが・・・・。
いずれも短調の3つの『幻想曲』が長調のソナタの間に挟まれて、精妙な効果を上げている。短調のモーツァルトとなると、内田の深さは尋常ではない。他のどのピアニストをもってきても敵わない。ここにある音楽は、最早個人の感懐などというものを超越している。深遠を辿り尽くすと宇宙につながっているという趣きだ。そうなると音楽は、時間をも消失し、テンポとかテクニックの問題ではなくなる。シゲティやバックハウス、ヴェデルニコフだけが成し遂げた領域に達しているのだ。
この内田のライヴ盤とグルダのソナタ集は、モーツァルト・イヤーの最高のプレゼントだ。
ライブの面白さが再現!
(2006-09-22)
内田光子演奏のモーツアルトプログラムの日本でのライブ盤。
2枚組みでたっぷりと聴かせてくれる。
観客がいることからくる緊張感。
すばらしい演奏であることは言うまでもないが、このライブが記録として残ることがうれしい。